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【田村修一の視点】2025年11月23日 J3リーグ第37節 栃木シティvsAC長野パルセイロ

J3リーグ第37節 栃木C 3(0-0)0 長野
14:03キックオフ CITY FOOTBALL STATION 入場者数 4,581人
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栃木Cが長野を3対0と下し、1試合を残してJ2自動昇格を決めた。

 

前節、岐阜に完敗を喫した栃木Cは、見事に態勢を立て直してホーム最終戦に臨んだ。アンカーだった岡庭裕貴をトップ下に、ボランチには加藤丈とともに森俊貴を配し、岐阜戦で後れを取った中盤のバランスを取り戻した。また、攻撃では、素早く両サイドとトップのピーター・ウタカに当てるロングボールを散らし、攻撃の強度とスピードを保ち続けた。

 

とはいえ長野ゴールをこじ開けるのは簡単ではなかった。バスケス・バイロン(13分)、乾貴哉(33分)の思わぬ負傷退場と、JFL降格のプレッシャーから解放され、失うものが何もない長野の伸び伸びした戦いぶりに、スコアレスドローのまま前半を終えた。

 

だが、後半になると、栃木Cの攻撃力が爆発した。56分にはマテイ・ヨニッチが森の蹴ったCKからヘディングシュートを、2分後には鈴木裕斗が同じく森のクロスを見事な右足ボレーでゴールに突き刺し、瞬く間に2対0とリードした。さらにはアディショナルタイム(90+3分)に吉田篤志が追加点を挙げ、試合を決定づけた。

 

バイロンと乾に代わり、急遽ピッチに送り出された吉田と鈴木で2得点。誰が出場してもクオリティが落ちない栃木Cの安定感と層の厚さ、どこまでも攻撃の手を緩めない戦いぶりを、彼らの得点が象徴していた。

 

目標の半分は達成された。最終節の相模原戦でも結果を出して、優勝で有終の美を飾って欲しい。

 

一方、敗れた長野も、持てる力のすべてを発揮して栃木Cに挑んだが、藤本主税監督も認めたように、全体に力不足の感は否めなかった。とはいえ2対0とリードされた直後、2枚目のイエローカードで進昴平が退場(54分)になってから、攻撃の勢いをさらに強めたのは、今後へと繋がるポジティブな姿勢といえた。

 

 

 

 

田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。