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テーマ【J開幕特集・改革元年前夜】

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海江田哲朗

2017 02/25  11:25

ヴェルディ・サーガの新章【J開幕特集・改革元年前夜】

今季のJ2は近年にないほど、指揮官が交代し、フレッシュな印象を残している。中でもミゲル・アンヘル・ロティーナ氏を新監督に迎えた東京ヴェルディはクラブの歴史からすれば、スペイン人指揮官を招聘したことは、驚きを持って迎えられた。大型補強も敢行し、J2復帰への本気度が透けて見える名門クラブ。かつてJで栄華を極めたクラブが、このプレシーズンの期間中、どんな時間を過ごしたのか。東京Vの番記者である海江田哲朗氏がレポートする。


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▼大転換のシーズン

 降って湧いたような話とはこのことだ。昨年11月25日、東京ヴェルディはミゲル・アンヘル・ロティーナ氏の監督就任を発表。クラブ史上初、スペイン人の指揮官にチームを託した。

 ロティーナ監督はリーガ・エスパニョーラで豊富な指導歴を持ち、中でも2002‐03シーズン、セルタを4位に導き、翌年欧州チャンピオンズリーグベスト16に進出させた実績は燦然と輝く。1999‐2000シーズン、オサスナで1部昇格。エスパニョールを率いた05‐06シーズンは、スペイン国王杯のタイトルを獲得した。その一方で、3つのクラブを降格させる苦渋も舐めている。

 補強も例年になく積極的に動いた。昨季のチームトップスコアラーである高木善朗を完全移籍で獲得し、永田充、橋本英郎といった日本代表経験者を補強。さらに将来を嘱望されながら、ガンバ大阪で出場機会のなかった内田達也を引っ張ってきた。

 近年の東京Vはアカデミー出身の選手でチームを構成し、現場のトップもまたクラブの伝統を知るOBが務めてきた。今回の試みは大転換と言っていい。クラブが変わろうとしている。その強い意志は伝わってくる。


▼きっちり型にハメる

 今季の始動から、ロティーナ監督は基礎的な戦術トレーニングに多くの時間を割いた。ボールの動かし方から始まり、立ち位置、体の向き、走るコース、見るべき場所、特に守備面の指導は細部に及んだ。果ては、クロスを入れる練習で「体の真ん前にボールを置くんだ。ゴールの方向を見ながら足を振る。自然とカーブがかかる」と蹴り方まで懇切丁寧にレクチャー。小学生ならともかく、これでメシを食うプロ選手はそれぞれ自分の形を持つ。得意な蹴り方がある。だが、そんなことはお構いなしである。

 まずは、きっちり型にハメる。基準を満たすまでは、四の五の言わせない。選手たちは要求される事の細かさを口々に言い、中にはアレルギー反応を示す者も出てくるのではないかと懸念されたが、いまのところネガティブな反応は目立っていない。昨季、東京Vは18位に沈み、危うくJ3降格の危機に陥った。ドン底を味わった選手としては、成長するために新たなモノを吸収したい。何より、勝ちたい気持ちがすべてを上回るのだろう。

 選手に対する接し方の違いに戸惑いは見られる。「(前任者の)冨樫さんは、ちょっとしたことでもすぐに声をかけてくれましたからね。ストレスを感じるようなことがあっても、それで気分がスッと軽くなったもんです。ロティーナさんはそのあたりのコミュニケーションがほぼない」と、ある選手はこぼした。心の機微をどう感じ取るかの問題か。いや、分かっていながら敢えて突き放すやり方もある。もうしばらく、経過観察が必要だろう。

 ロティーナ監督はチームの規律を徹底し、ベースとなるのは堅固な守備組織だが、ゲームを支配することも同様に重要視する。少なくとも、相手にボールを持たせてリズムを作るリアクションサッカーではない。正しくは、相手にボールを持たせても支配できる状況を作ることだ。沖縄キャンプでは、国内トップレベルのポゼッション巧者だろう川崎フロンターレとトレーニングマッチを行い、中盤の主導権争いで互角以上の戦いを演じた。結果は、45分×3本勝負で1-1のドロー。コンディションの優位性を差っ引いても、上々の内容である。ボールを奪うために有利な状況の作り方、相手より一歩先んじるディテールの部分に、トレーニングの成果が如実に表れた。

 現状、ゴール前の詰めに課題を残すが、チームの仕上がりはまずまず。キャプテンの井林章は言った。

「監督を信じてやること。いまはそれが一番大事だと思います。ヘタな考えを挟むと、チームがバラけてしまう。とことん信じ切って、付いていく。そうしなければ、出る結果も出なくなる」

 2月26日、開幕戦の相手は徳島ヴォルティス。リカルド・ロドリゲス監督とのスペイン人指揮官対決となる。試合後の監督会見も楽しみだ。ロティーナ監督はジョークを言うこともあるらしいが、私はまだ聞いたことがない。

 壮大なるヴェルディ・サーガ、新章の幕開けやいかに。

海江田 哲朗(かいえだ・てつろう)

1972年、福岡県生まれ。獨協大学卒業後、フリーライターとして活動。東京ヴェルディを中心に、日本サッカーの現在を追う。主に『フットボール批評』、『サッカーダイジェスト』などに寄稿。著書に、東京ヴェルディの育成組織にフォーカスしたノンフィクション『異端者たちのセンターサークル』(白夜書房)がある。2016年初春に始動した『スタンド・バイ・グリーン ライター海江田哲朗のWEBマガジン』で、東京Vのマッチレポートやコラムを届けている。最近は必要に迫られて始めたカメラに夢中で、新たに購入した機材が早く届かないかなと待ち焦がれる日々。

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