岡田とザック。壮行試合、好対照の「二つの埼スタ」

20140530.jpg(c)Tete Utsunomiya
4年前、岡田ジャパンが浴びていたのは専ら罵声とブーイングであった

▼途絶えぬポジティブな声援
 5月27日に埼玉スタジアムで開催された日本代表の壮行試合。FIFAランキング130位のキプロスに1-0というロースコアだったにもかかわらず、試合後の観客はアルベルト・ザッケローニと23人の代表メンバーに対して、ポジティブな声援を送り続けていた。

 4年前の壮行試合とはえらい違いである。

 2010年5月24日、同じスタジアムで行われた韓国との壮行試合は、開始早々の6分にパク・チソンの先制ゴールで出鼻をくじかれると、終了間際にはパク・ジュヨンにダメ押しのPKを決められ、0-2で完敗。試合後のスタンドは殺気に満ちたブーイングに包まれ、公式会見で岡田武史監督は「犬飼会長(当時)に進退伺いを申し入れたんですが『やれ』と続投を命じられました」と明かして会場は騒然となった(翌日、「あれはジョーク」と弁明)。

 キプロスに1-0で勝利するのと、韓国に0-2に敗れるのとでは、ファンにとってどちらが許し難いだろうか。当然、後者であろう。岡田監督は国内最後の試合に「強い相手」をリクエストしたそうだが、何も韓国である必要はなかったと思う。4年前は今ほど日韓関係が険悪ではなかったが、それでも両国のライバル関係とタイミングを考慮するなら、あまりにリスクの高いマッチメイクであったと言わざるを得ない。同じ「強い相手」でも、もうちょっと後腐れ感の少ない相手を呼ぶことができなかったのだろうか。そう思ってしまうが、このどん底があったからこそ未曾有の危機感は開き直りへと転化され、さらにスイス合宿での試行錯誤を経て、南アフリカでの大々的な方針転換へとつながった。そうして考えてみると、4年前の壮行試合は結果として「成功」だったのかもしれない。

 同時にあの時の経験は、われわれファンにも少なからぬ成長をもたらしたように思う。いくら「壮行試合」といっても、目先の結果や内容に対してナーバスになるべきでないこと。本大会の初戦を見据えたピーキングをしているのだから、選手のコンディションが底にある可能性は十分にあり得ること。そうした状態で試合をすれば、相手が格下でもしょっぱい内容となる確率は高いこと。実際に壮行試合の内容が乏しくても、サポーターを自認するのであれば監督や選手に精いっぱいのエールで送り出すべきであること、などなど。

 キプロス戦後に送られた100%ポジティブな声援は、決してライトなファンによるファナティックな感情の発露だけではなかった、というのが私の考えである。わが代表チームは5大会連続、5回目のW杯出場を果たしているのだ。当然、それにふさわしいリテラシーを有したサッカーファンも、わずかずつ増えているのではないだろうか。

▼敗北の時、待っているのは果たして...
 もちろん、これはまだ仮説の域を出ない。

 わが国のサッカーファンのリテラシーが真に明らかとなる瞬間があるとすれば、それは今大会で日本代表がグループリーグ突破を果たせず、3試合を戦っただけで帰国の途につくことになった時であろう。「何を縁起の悪いことを」と思われるかもしれない。だが私は、今大会の日本代表が「史上最強」であると評価する一方で、グループCでの戦いは決して楽なものではないとも認識している。ザッケローニが目指してきた「日本らしさを活かした攻撃サッカー」をブラジルで披露しながらも、武運つたなく2位以内を確保できない可能性は、それなりのパーセンテージであり得る。それが私の見立てだ(もちろん、だからといって日本の敗北を願っているのではない。念のため)。

 一つの可能性として、もしそうなった場合、日本のサッカー世論はどのようなリアクションを見せるのだろうか。「結果は残念だけど、日本らしさが前面に出ていたので満足。4年後に期待!」なのか、それとも「W杯は結果がすべて。結果を出せなかったザックは無能!」なのか。日本の戦いぶりや試合内容にもよるだろうが、もしこの4年間を全否定するような世論が大勢を占めたとしたら、私の仮説は間違っていたことになる。

 いずれにせよ今大会は、ザッケローニの日本代表が目指してきたサッカーが試されるのと同時に、われわれサッカーファンもまた試されているのである。


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