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【六川亨の視点】2024年11月23日 天皇杯決勝 ガンバ大阪vsヴィッセル神戸

天皇杯決勝 G大阪 0(0-0)1 神戸
14:02 キックオフ 国立競技場 入場者数56,824人
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第104回天皇杯決勝、リーグ戦首位の神戸対4位G大阪の試合は堅守を誇る両チームの対戦とあって、前半の決定機はG大阪の1回だけという大接戦となった。「僕のサッカーはハイプレス、ハイライン。(ボールの)出所をみんなでハメていく。攻撃も奪った後が速い」と吉田孝行監督が言うように、神戸にしたら狙い通りの展開だった。これに対しダニエル・ポヤトス監督は「前半は神戸を上回った。決定機をしっかり決めたかった」というように、10分には山田康太の左クロスからダワンが決定的なヘディングシュートを放つ。しかしGK前川黛也にブロックされると、こぼれ球を拾った山下諒也のクロスを再びダワンがヘッドで反応したものの、これはクロスバーの上。G大阪の決定機はこの1回だけに決めておきたかったところである。

 

試合が動いたのは後半14分に神戸が左MF井出遥也に代えて佐々木大樹を投入してからだった。同じ左MFに投入されたが、佐々木は1トップの大迫勇也と左FW宮代大聖の中間のポジションに攻め上がり後方からのパスを引き出す。さらに180センチの長身を生かした空中戦での落としでも攻撃の起点となった。19分の決勝点も右クロスに潰れながらルーズボールにすると大迫が拾い、大迫はすかさず左に展開。これを武藤嘉紀がドリブルで運んでGKの足元を抜くシュート。これはカバーに入ったDFにブロックされたが、すかさず宮代が至近距離から押し込んで決勝点とした。吉田監督にしてみれば、「大樹(佐々木)は素晴らしい選手、素晴らしい活躍。天皇杯は4試合すべてにスタメンなので使おうか迷った」と今シーズンのJ1リーグでも5ゴールの活躍の佐々木を評価していた。ただ、「今日はスタンバイで、途中から流れを変えてくれることを期待した。今日の勝利は大樹がいなければ無理だったし、役割に徹してくれた」と最大級の賛辞を送った。自身の采配を自慢するようなことはない、謙虚な吉田監督らしい会見だった。

 

対してポヤトス監督は「後半は神戸のタレント性にやられた」と大迫、武藤、宮代に加えて交代出場の佐々木らの連動したプレーからの決勝点を評価しつつ、「ダワンの決定機を決めることができればよかった」と率直に悔やんだ。しかしながら練習中に右ハムストリングの肉離れで試合直前にチームを離脱した宇佐美貴史に関しては、「言い訳はしたくない。大会2日前に肉離れした。重要な選手だが、準備する姿勢でチームを助けてくれた。全員がしっかりやってくれた」と絶対的なエースストライカーの欠場を敗戦の言い訳にはしなかった。これもまた素晴らしい“敗軍の将”の態度だった。

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。