【六川亨の視点】2021年10月30日YBCルヴァンカップ 決勝 名古屋グランパスvsセレッソ大阪
JリーグYBCルヴァンカップ 決勝 名古屋グランパス 2(0ー0)0 セレッソ大阪
13:09キックオフ 埼玉スタジアム2○○2 入場者数17,933人
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10月10日のルヴァン杯準決勝第2戦が終わった段階で、名古屋はFC東京と1勝1敗ながら総得点で上回って、C大阪はホームで浦和を1-0で下して1勝1分けで決勝戦進出を決めた。C大阪は2017年以来4年ぶりの、名古屋は初の決勝進出だった。そしてこの時点で、両チームともリーグ優勝の可能性は消滅していたものの、名古屋にはルヴァン杯と天皇杯、ACLの3冠の、C大阪にはルヴァン杯と天皇杯の2冠の可能性があった。
しかし1週間後の17日、名古屋はACL準々決勝で浦項に0-3で敗れて初のアジア制覇の夢は消えた。さらに10日後、今度は天皇杯準々決勝でC大阪に0-3で敗れ、1ヶ月も経たないうちに3冠はあっけなく消滅。残ったのはルヴァン杯のタイトルだけだった。一方のC大阪は天皇杯準々決勝で名古屋に勝ったことで2冠の可能性があった。ルヴァン杯決勝の前哨戦ともなった天皇杯準々決勝で、小菊昭雄監督は3日前のJ1リーグ第33節の横浜FM戦からスタメンを9人も入れ替えた(名古屋は5人)。
この采配が的中し、スタメンに起用されたDF鳥海晃司とチアゴが前半にゴールを決め、後半にはアダム・タガートがダメ押しの3点目で名古屋を一蹴した。
こうしたバックボーンで迎えた第29回のルヴァン杯決勝、名古屋が、というよりはマッシモ・フィッカデンティ監督が守備から入るゲームプランを採用したのは当然だった。自陣に引いて守備ブロックを作り、C大阪のポゼッションを迎撃する。攻撃はマテウスや前田直輝の飛び出しによるカウンターだけ。ほとんど見せ場もなく0-0で終わった前半も、フィッカデンティ監督からすれば想定内の結果だっただろう。
試合が動いたのは後半開始直後の2分だった。相馬勇紀の左CKから抜けてきたボールに前田が頭から飛び込んで先制弾を突き刺す。天皇杯準々決勝では清武弘嗣のCKから2失点していただけに、その「お返し」というわけだ。そしてフィッカデンティ監督らしいのは、13分に相馬に代え長澤和輝、前田に代えて齋藤学を投入すると、4-2-3-1から4-1-4-1に変更して早くも守備固めに入る。後半28分に柿谷曜一朗に代えてシュヴィルツォクを投入したのは攻守に“高さ”が欲しかったからだろう。
そのシュヴィルツォクのシュートから稲垣祥が34分に追加点を奪うと、すぐさまボランチの木本恭生に代えて右SBの森下龍矢を送り5-4-1とさらに守備を強化した。試合はこのまま盛り上がりに欠けながらも(それもフィッカデンティ監督の狙い通りだろう)名古屋が2-0で逃げ切り初のルヴァン杯を制覇。リーグ優勝と天皇杯優勝と合わせ、9チーム目の3冠獲得チームとなった。
残念ながら敗れたC大阪は最後まで攻撃がチグハグで、90分間で決定機はゼロ。それでも小菊昭雄監督は試合後、「まだ天皇杯のセミファイナルが残っている。獲りにいくぞ」と選手に話したという。相手は浦和のためオープンな打ち合いになるかもしれない。これはこれでC大阪にとって望む相手と言えるのではないだろうか。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。