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【開幕特集】勇気を持ってBOXへ!サンフレッチェ広島・城福監督が追求する3つのテーマとは?

Jリーグ開幕の時が近づいてきた。「DAZN Jリーグ推進委員会」では、各クラブの動向を探る特別企画がスタート。サンフレッチェ広島の城福浩監督は新シーズンに向け、伝統の3-4-2-1に手を加えていた。

 

▼新たなフォーメーションの意図

昨年まで森島司のポジションはシャドー・ストライカーだったが、今季はこのポジションはない。伝統の3-4-2-1から4-2-3-1のフォーメイーションに変更され、森島はサイドハーフを任されることになる。

「決して3バックが悪いというわけではない。ただ昨年終盤、同じような展開の中で勝点が取れなかった現実を考えた時、何かを変える必要があると考えたんです」

城福浩監督はシステムの変更について、こう説明する。

その指揮官は今季も、広島が追求するべきこととして三つのテーマを掲げた。

(1)可変システム
(2)左右非対称
(3)BOX INとBOX OUT

(1)については試合中にフォーメーションを自在に変えること。(2)は左右のサイドの攻め方に違いを出すこと。この二つについては、昨年も意識していたことだという。
今年、特に考える必要があるのは(3)だ。「BOX IN」は攻撃時にペナルティエリアの中にいかに入って行くか。「BOX OUT」は守備時に相手をペナルティエリアの外にいかに押しだすか。「これは昨年の戦いから得た宿題。システムとはほぼ関係ない課題なのですが、敢えて(システムを)変えることによって、これらのことをより意識できる」と城福監督は説明する。

昨年の平均得点が1.35と低迷した広島にとって、攻撃力増幅は大きな課題だ。決してチャンスの数が少ないわけではないのだが、とにかくシュートが決まらない。そこは個人能力の問題もあるのだが、指揮官はチームとして解決しようと考えた。それが「BOX IN」のコンセプトである。

推進力に強みのあるジュニオール・サントスを練習試合でトップ下に使っているのも、彼に前を向いて勢いを持ってBOXの中に入ってほしいから。そこに森島司や浅野雄也、柏好文やエゼキエウらのアタッカー陣やサイドバックが飛び込む形を多くつくり、BOXの中の人数を増やすことで得点機の質をあげていく。その鍵を握るのはもちろん、背番号10である。

「ジュニオール・サントスは頼もしいし、練習試合でも凄いプレーをやっている。彼のスピードについていきたい。チームとして点をとれない時期もくると思うけれど、その時に自分が点をとるようにできれば。去年よりも流動性がある攻撃がキャンプからできているし、プレシーズンではいい感じでこれていると思います」

前線の枚数を増やし、ハイラインで相手を敵陣に圧縮させるサッカーがしたい。それが広島の方向性だが、当然リスクはある。ハイラインの裏にはスペースがあり、練習試合でもそこをつかれて失点した。また4バックにすることで、ボールサイドに人数をかける必要があり、必然的に逆サイドにはスペースがある。

「昨年は5バックだったので、ウイングに凄い選手がいても完全に前を向いて仕掛けられることは少なかった。でも今季はそうはいかない。サイドチェンジされたら厳しくなるので、自分がしっかりと守備に戻らないといけない。難しいですけど、やられないように頑張ります。攻撃でも守備でも、しっかりと人数をかけられるようにしたいですね」

熟成の域に達していた3-4-2-1を脇に置き、新しい立ち位置に挑戦する。4チーム降格という厳しい年に、あえて変化を求めた勇気と心意気は上位進出への決意だ。

森島司の言葉を最後に紹介しよう。
「正直、やってみないとどうなるか、わからない。ただ、悪くないと思っています」

 

中野和也(なかの・かずや)
1962年3月9日生まれ。長崎県出身。居酒屋・リクルート勤務を経て、1994年からフリーライター。1995年から他の仕事の傍らで広島の取材を始め、1999年からは広島の取材に専念。翌年にはサンフレッチェ専門誌『紫熊倶楽部』を創刊。1999年以降、広島公式戦連続帯同取材を19年目に入った。著書は『サンフレッチェ情熱史』『戦う、勝つ、生きる』(ソルメディア)。最近はアウトドア熱が復活。今年は登山も30年振りに復活させる予定です。
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