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3月11日にできること【川崎フットボールアディクト】

2016 03/12  09:06

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は川崎フロンターレを中心としたWEBマガジン「川崎フットボールアディクト」から東日本大震災に関する記事になります。



【#オフログ】3月11日にできること川崎フットボールアディクト
2016年03月11日更新

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東日本大震災の甚大な被害を目の当たりにして、ライターとして何ができるのか、当時考えた。

2011年3月11日の震災発生以降、サッカー界はJクラブが募金活動などの行動を起こし、日本代表がJリーグ選抜と試合をするなどして、できることに取り組んでいた。

そうした周囲の動きを見つつ、熟考した末に思い浮かんだのが、アイスブレイクというジャンルのメニュー本を出版させてもらい、印税を寄付するという活動だった。

当時ニュースでは、故郷を地震と津波と原発事故などで奪われた子どもたちが、避難所や遠方への引っ越しを余儀なくされているという実情が報じられていた。新しい環境に入った子どもたちの境遇を考えた時に、アイスブレイクという手法が使えるのではないかと考えたのだ。

「アイス(氷を)ブレイク(溶かす)」つまり、初対面の人同士や、新しい場に慣れない人のコミュニケーションを潤滑にするための手法の一つで、サッカー界ではよく取り入れられるものだった。

たとえばサッカースクールでは子供たちを楽しませるために。高学年ではチームの結束を深めるために。もちろんプロでも使われる場面はある。疲労が溜まったチームの気分転換だったり、悪くなった空気を一変させるためだったり。

考えればいくらでも使いみちのあるアイスブレイクは、Jクラブや監督が蓄積してきた手法で、これを一冊にまとめればサッカー界の貢献の一つにもなると考えたのだ。複数の版元に断られながらベースボールマガジン社さんに了解をもらい、続いてJリーグとJFAに説明に赴いた。趣旨を説明すると、両方の団体とも快くこの申し出を受けてくれた。

Jリーグでは各クラブに通達を出してくれ、当時Jリーグ技術委員会委員長の要職に就かれていた上野山信行さんにメニューの提供とインタビューを許可してくれた。JFAでは当時U17日本代表の監督だった吉武博文さんへの取材を受けてくれた。両団体とも無報酬でOKだと言われた。

もともと印税は全額を寄付するつもりだった。最初にJリーグに相談に行った際、その旨を伝えると、担当者の方が「そんな無理はしないでください」とあっさり断られてしまった。それくらいのやせ我慢はした方がいいのだろうと思っていたが、支援疲れして生活そのものを破綻させては意味が無い。だからちゃんと報酬を受け取った上で、寄付してもらえればそれで良いですよ、と言ってもらった。この一件があってから、支援疲れというものを考えるようになった。

支援される側、する側。共に思いがある。発災直後は、生産手段のすべてを奪われた漁師や農家、普通の会社員もそうだが、生活を再建させるための基盤が必要で、そこに支援が入る必然性があった。

支援する側は、震災直後の瞬発力で「オレもオレも」と寄付できた。

問題はそうした山を超えたあとだ。支援される側には、わりと早い段階から「いつまでも甘えて良いのか」という声が出てきていたという。彼らの本質は、物乞いではないということだろう。自らの仕事に誇りを持っていた人たちだから、早い時期から自立の道を模索してきたと聞く。

その一方で、支援する側にとっては継続した寄付だったりの行動が難しくなる。そこには慣れと、報じられる情報の先細りという原因がある。

計画停電が行われ、ネオンサインが消えた繁華街を歩き、節電の名のもと、薄ら寒く薄暗いレストランで食事をする傍ら、物流の断絶により日用品がコンビニやスーパーから消えるという経験を実際にすることの効果は大きい。しかしそれが過去の出来事となり、破壊された被災地の風景が当たり前になった時、支援への感覚は麻痺する。

仕方ない。人間は、そういうものだから。

そんな状態で支援を続けようとしてもよほどの覚悟がなければ難しい。フロンターレはいまでも街頭募金を続け、支援の継続の大事さを訴えかけている。そうした活動の成果はいまでも募金として集められているが、その額は初年度に比べればどうしても少なくなる。

だからこそ、支援の形を変化させる必要がある。そういう意味で、昨年行われた陸前高田ランドhttp://www.frontale.co.jp/info/2015/1111_1.htmlは画期的だった。一方的な寄付から、被災地で生産された物品を購入する活動へ。これは被災地に、生産のための環境が整ったからこそのイベントだった。

「食べたい、飲みたい、手にしたい」

そう思ったものを買う。それが被災地の支援に繋がる。日常にある消費活動がそのまま支援になるこの試みは、支援が新しい段階に入ったことを示しているのだろうと思う。

ほとんどの方にとって被災地は遠いところでの悲劇なのだと思うが、3.11という文字列や3月11日という日付。そして川崎フロンターレのイベント等のトリガーでその都度思い出してもらえればいいと思う。そしてその時に、被災地の商品を購入するという発想を思い起こしてもらえればと思う。

そんなわけで、5年目の3月11日に思うことをつらつらと書いてみた。

そして、震災発災の時間である14時46分に黙祷ができなかっので、ここで1分間の黙祷を捧げたいと思う。


復興デパートメント
http://www.fukko-department.jp/

NHK岩手制作の、雪っこ復活のドキュメンタリー
https://youtu.be/xnphc8ddjb8

(取材・文・写真/江藤高志)


川崎フットボールアディクト」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。


【プレビュー】J1 1st. 第3節 川崎vs名古屋 大量失点の原因を潰し、精度を高めて臨む(2121文字)
http://www.targma.jp/kawasaki/2016/03/11/post5464/

【コメント】第3節名古屋戦前。「ゴールに絡むのが一番の仕事なので」(狩野健太)/「4失点は結構屈辱なのでもう一度気を引き締めて」(奈良竜樹)ほか
http://www.targma.jp/kawasaki/2016/03/11/post5453/

【コメント】東日本大震災の復興支援活動について(中村憲剛、登里享平)
http://www.targma.jp/kawasaki/2016/03/11/post5447/

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東日本大震災について(0票)

川崎フロンターレについて(1票)

Tommy(IP:188.143.234.155)

I waetnd to spend a minute to thank you for this.

2016年6月21日 11:24

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