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【東京ヴェルディ】「この人を見よ!」左のスペシャリストとして~DF6 安在和樹~

2016 03/10  11:41

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は東京ヴェルディを中心としたWEBマガジン「スタンド・バイ・グリーン」から安在和樹選手に関する記事になります。




【無料記事】【この人を見よ!】vol.2 左のスペシャリストとして~DF6 安在和樹~(2016/03/09)スタンド・バイ・グリーン

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ドリブルで駆け上がる安在和樹。

東京ヴェルディの左サイドにこの人あり。2013年、ユースから昇格し、翌年以降は左サイドバックのレギュラーに定着している安在和樹だ。最大の武器は、左足のキックである。前線にロングパスを送り、サイドに深く切り込んではゴール前に精度の高いクロスを配給。2015年は五輪代表に選出されるなど、注目度を高めつつある。一方で、「もうひと皮むければ」、「潜在能力を充分に発揮し切れていない」と飛躍に期待する声も。安在の攻守における進化は、チームが昇格戦線を勝ち抜くうえで必須テーマのひとつだ。



■心の真ん中を抜かれた気分

安在和樹は攻撃的なプレースタイルが身上だ。ドリブル、パスを駆使して攻め上がり、ぐいぐい相手を押し込んでいく。繰り返しスプリントできる走力も備える。決め手は卓越した左足のキック。適時、蹴り方、ミートポイントを使い分け、前線に正確なクロスを送る。機を見て放つシュートは、遠めからでもゴールを射抜くほどの威力がある。

一方、ピッチの外に一歩出れば、人が変わったように穏やかだ。受け答えはおっとりしていて、淡々と一定のテンションで話す。

「いつもヘラヘラしているとは言われますね」

でしょうね。けれども、サッカー選手として上を目指す気持ちは持っているんでしょ?

「もちろん。それがなければ選手をやっている意味がないです。一番上まで行きたい。代表にも入りたい。将来はヨーロッパでプレーしたい」

言葉としては、わかる。ただ、いまいち真に迫ってこないというのかな。どこまで本気でそう思っているのだろうかと。

「思ってますって。言葉にするのってムズカシイ。勉強はまるでダメだったんで」

冨樫剛一監督は、安在について次のように話した。

「受け取る側によっては、彼の言葉や態度が誤解を与えることがあるようです。『あいつはなめてるのか? ふざけているようにしか見えないぞ』と、ほかの指導者から言われたことも。1年ぐらいして、『なるほどね。人と違うところを見ているんだな』と評価が変わりましたけどね」

これに関して、身に覚えは?

「誤解されていることもあるのかなあ。誰とでもしゃべれるし、合わせられる。育成の頃からいろいろな指導者の方にお世話になっていますが、特に苦手な人もいなかった」

もっとできるのに、と言われることは?

「よく言われます。はい、頑張りますと。それしか返しようがなくて」

これだけ打っても響かないとかえって面白くなってくる。どうにかして核心に触れたい僕は、手を変え品を変え、いろいろな質問をしてみた。安在が熱をもって語ったことのひとつが、東京ヴェルディユース時代の回顧だった。

16歳の秋、ユースの1年目。安在は左ひざの半月板を損傷し、全治6ヵ月。ようやく復帰した試合で、今度は親指を骨折した。計8ヵ月、サッカーから離れることを余儀なくされた。

「心の真ん中を抜かれた感じで、何をしても楽しくない。サッカーは自分そのものだったんだなあって、そのとき再確認できました」

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安在の全力ダッシュ!

■「おまえは相撲取りか!」(冨樫監督)


東京ヴェルディユース94年組のトップランナー、五輪代表で10番を背負う中島翔哉(FC東京)は安在の眼にどう映っているのだろう。

「翔哉はすごいのひと言です。サッカーが好きすぎる。漫画の世界の住人みたい」

かすった程度ではあるが、一度は五輪代表に呼ばれている。先日のリオ五輪アジア最終予選、日本は幾多の困難を乗り越えて頂点に立った。

「結果が出てよかったなあと。ピッチに立てなかった悔しさがなかったわけではないですけど、常連組ではなかったのでそれほど大きいものではなかったですね。ほんの少しですが、五輪代表を経験できたのは価値があったと思います。自分にとっては初めての代表で、知らないことばかりでしたから」

サッカー以外も初めての出来事に好奇心はくすぐられる?

「知らない人と会うのはわりと好きですね。ストレスは感じない。その人がどんな仕事をしているのか興味があります。それで自分に役立つことは吸収できればと」

安在が左サイドバックを本職とするようになったのは、ユースの1年目からだ。それまでは中盤の底で華麗にパスをさばくゲームメイカー。ボランチの仕事に未練がないわけではなかったが、「まずはプロになるのが目的だった。それに近づけるのなら」と意欲的に取り組んだ。

こういったことは育成の指導者が意見を出し合い、方向性を定めるのだという。冨樫監督はジュニアユースまでの安在を振り返って言う。

「センターサークルのなかにいて、左へポーン、右へポーンと蹴るだけ。円から出たら負けだと思ってるだろう? おまえは相撲取りか! と」

安在の言い分はこうだ。

「だって、それで勝てるんですもん。前線にスピードのある(高木)大輔がいて、菅嶋(弘希/ジェフユナイテッド千葉)に外山(凌/阪南大3年)。裏に蹴っておけば全部パスが通り、点を取ってくれた」

勝利に足る仕事をすればいいという合理的な思考。一方で、安在がユニークなのは、定められたルールの範囲内で目的を達するために手段を講じる抜け目なさにある。

「たとえばミニゲームで、オフサイドの有無をこちらが説明しなければ、アンカズは必ずオフサイドなしと解釈してゲームを有利に運ぼうとします。そこは彼の面白さですね」(冨樫監督)

■待たれる飛躍の瞬間

ある日の練習後、冨樫監督と安在が向き合い、長い時間をかけて話をしていた。

「冨樫さんから言われたのは、攻守における改善点。より仕事量を増やし、質を高めていこうと。自分のクロスとFWの動きを点と点で合わせられれば、チームの得点力は上がる。拮抗した状況で、プレーが消極的になることも指摘されました。自分の力を発揮できていると感じるときは、たしかに高い位置にポジションを取っていることが多い。ヴェルディがJ1に上がるために、もっとやらなければいけないとわかっています」

ユース時代の恩師、楠瀬直木(U‐16女子日本代表監督)からはこんなエールが届いた。

「これまでは彼のガツガツしすぎない姿勢、謙虚さを持ち合わせていることがいい方向に出ていたと思います。ただし、ここから先、上に行くためにはガツガツしないと届かないですよ。あの左足のキックは特別です。1試合で5本くらいピンポイントのアーリークロスを入れられるようになれば、存在は際立ってくる。ほかの能力も平均点には達するでしょうから、ステップアップの道筋は見えてくるはずです」

左利きのサイドバックはスペシャリストで希少価値がある。昨シーズンのオフ、具体的な獲得オファーまで進展することはなかったが、いくつかのクラブで常にリストアップはされているに違いない。

「今年で22歳。いまの時期は試合に出て経験を積むのを最優先としたい。より高いレベルでプレーしたい希望は持っています。サブではなく、一番手として熱烈に必要とされるのだったら真剣に考えるでしょうね」

安在は置かれた環境に身体のサイズを合わせ、必要に応じてパフォーマンスを上げる面がある。大きく飛躍するとしたら、新たな厳しい環境に飛び込むほかないのだろう。つまり、ヴェルディがJ1に上がるか、それとも個人としてステップアップするか。

どちらを選ぶか訊ねるのは、愚問というものだ。ぜひともその瞬間に僕らを立ち会わせてほしい。


※【この人を見よ!】は、隔週水曜日に更新します。


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天真爛漫な笑顔。 写真=kitasumi


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