収穫の多かった山口取材 レノファで変わる街の風景【徹マガ】
2015 11/07 08:02
有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は宇都宮徹壱公式メールマガジン「徹マガ」からレノファ山口FCに関する記事になります。
収穫の多かった山口取材 レノファで変わる街の風景(徹マガ)
2015年10月30日更新
(c)Tete_Utsunomiya
今回の巻頭コラムは、まず嬉しいニュースから。
当メルマガで『篠原美也子の月イチ雑食観戦記』を連載中の篠原美也子さんが、ついに書籍でメジャーデビューすることになった。『スポーツに恋して 感傷的ウォッチャーの雑食観戦記』というタイトルからもおわかりのように、徹マガでのこれまでの連載コラムがメインとなっている(もちろん、書きおろしもある)。発売は来月中旬とのこと。徹マガでは当然、著者インタビューも予定しているので、ぜひ楽しみにしていただきたい。
なお、不肖・徹マガ主筆も帯の文章を書かせていただいた。古くからの篠原ファンの皆さんはもちろん、当メルマガで篠原さんの文章に魅了された方もぜひ、こちらでポチッとしていただきたい。なお「書影準備中」となっているのは、篠原さんがカバーイラストを鋭意製作中ゆえのこと。果たして、どんなカバーに仕上がるのか、またどんなアスリートが表紙を飾るのか、こちらもまた楽しみでならない。
さて、私のほうは相変わらずあちこちを飛び回っている。中東から戻ってきて、すぐに「広島経由で岩手へ」取材に行った話は前号で書いたが、岩手での全社取材を終えると、今度は山口に向かった。本稿は山口での取材を終えて東京に戻る新幹線で書いているのだが、明後日には短期間の海外取材があり(どこに行くのかは次号でお伝えする)、帰国後すぐに愛媛での地域決勝1次ラウンド、それから今度は代表戦でシンガポールとカンボジアに向かう。正直、最近は朝起きて、自分がどこにいるのか一瞬わからなくなることも少なくない。まあ、それだけ仕事が途切れていないということ自体、大変ありがたいことではあるのだが。
さて、今回の山口取材は、スポナビで連載中の『J2・J3漫遊記』でレノファ山口を取り上げるためだ。山口といえば、2年前まで中国リーグ所属だったが、JFLの改組とJ3創設の追い風を受けて、地域決勝で1次ラウンド敗退だったにもかかわらずJFLに昇格(とはいえ、この年の全社で優勝したことは特記すべきだろう)。そしてJFL1年目の昨シーズンは4位に終わったものの「JFL年間4位以内、Jリーグ百年構想クラブ内で2位以内、平均観客数が原則2000人以上」という条件をクリアし、今季からJ3に参戦。ルーキーイヤーながら首位を独走し、J2昇格を射程距離圏内にとらえている。
個人的には、山口には2つの思い出があった。ひとつは08年に沖縄・石垣島で行われた地域決勝の決勝ラウンド。この年に中国リーグで優勝した山口は、鳥取で行われた1次ラウンドで静岡FC、グルージャ盛岡、そして松本山雅FCに勝利して、JFL昇格まであと一歩に迫る。しかしそこで待ち受けていた、FC町田ゼルビア、ホンダロックSC、そしてV・ファーレン長崎に、山口は1勝もできないまま3連敗。この3チームと比較して、戦力と経験の差は明らかではあったが、チャレンジャーとして果敢な戦いを見せた彼らには、ある種の清々しさが感じられた。
それから2年後の10年。全社の開催地となった山口を初めて訪れる機会があった。萩や下関や岩国といった観光地のイメージが強かったので、道中はとてもワクワクしていたのだが、投宿した新山口駅前は恐ろしく殺風景な上に、夜になると真っ暗だったので大いに当惑したものである(5年後の今は、駅前の店もずいぶんと増えた)。また全社という大会ゆえに、会場の維新百年記念公園陸上競技場を訪れる観客もまばらで、大会後のスタジアムの活用が案じられたものである。
要するに、つい最近までの私のレノファ山口に対するイメージというのは、7年前の地域決勝で見た、まだまだアマチュア然とした元教員チームであり、日が暮れると真っ暗な新山口駅前と客がほとんどいない維新陸上競技場の光景であった。それゆえ「あのレノファ山口が」たった3シーズンで中国リーグからJ3にたどり着き、そこで超攻撃的なサッカーを展開して首位を独走し、しかも維新の競技場にはいつも5000人もの観客が訪れているという事実が、にわかには信じられなかったのである。
今回、取材対象に山口を選んだ理由は、まさにそこにあった。テーマは大きく2つ。(1)山口の快進撃を支えているものとは何か? そして(2)山口の教員チームはなぜJクラブを目指したのか、である。どちらのテーマも、雑誌やネットである程度の情報を拾うことができるが、そこは『漫遊記』ならではの視点と取材力で、さらに深掘りしたレポートを鋭意執筆中である。
いくつかの偶然に当事者たちの情熱が加わることで、街の風景が加速的に変わっていく。その大まかなストーリーは、他の地方クラブの事例とあまり変わりはない。ただ山口のケースは、その偶然と情熱の度合いが、これまでの事例と比べて、かなりドラマティックであったように感じられた。また取材を続ける中で、あの伝説的な企業チーム、永大産業サッカー部とレノファとの意外な接点を知ることができたのは収穫だった。掲載は11月下旬を予定している。どうか、ご期待いただきたい。
「徹マガ」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。
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