楢崎正剛のグローブの中の秘密。大記録のこぼれ話
2015 10/10 07:16
有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は名古屋グランパスを中心としたWEBマガジン「赤鯱新報」から楢崎正剛選手に関する記事になります。
【赤鯱短信】楢崎正剛のグローブの中の秘密。大記録のこぼれ話(1644文字)(赤鯱新報)
2015年10月03日更新
今から3日前のこと。名古屋の一部の選手たちがとある実技を伴う講習をトヨタスポーツセンターで受けているのだが、この日も午前練習後にその講習が行われていた。参加選手は各々昼食をとり、練習着に着替えてピッチへ向かう。その準備中に、ロッカーから小川佳純の爆笑が聞こえてきた。
「ちょっと!こんな講習でここまでガッチリテーピング巻きます!?(笑)」
誰のことを言っているのかは、その後の会話で楢崎正剛ということが判明。「オレは今週ケガしたら怒られるんちゃうかと」と発言していただけに、これはもしや600試合目への用心の表れかと思い、講習終了を待って突撃してみた。
「テーピング? いやいや、毎回していることですよ。どんな時も念のためにね。オレ、けっこうそういうことでケガするからさ。前にもバスケットボールしててやったり、自主トレ中のミニゲームでケガしたこともあった。600試合だから用心したというわけではないんですよ、残念ながらね(笑)」
用心は用心でも、苦い思い出から得た教訓からのことだった。ちなみにバスケットボールとは2008年、当時の選手間でクラブハウス裏に設置したバスケットゴールを使って遊ぶのが流行っていたもの。その年、最終節まで優勝争いを繰り広げていたチームだったが、楢崎はそのバスケットボール中に負傷しラスト4試合を欠場し、苦い思いをしていたのである。
思えば楢崎の"武装"は他にもある。足首のテーピングに加え、手術を繰り返した膝には練習や試合後のケアが欠かせない。そして商売道具である手にもテーピングは不可欠だ。特に右手のテーピングは、パフォーマンスを左右する重要なものだという。
「右の小指はいつの間にか靭帯がなくなっていたから、テーピングしないと指が裏返っちゃうんですよ。ボールを投げるとツルンって抜けちゃう。ケガが原因じゃないんだけどね。左手も小指を脱臼骨折してからテーピングするようになった。小指って負担がかかるのかね?自分ではよくわからないけど」
そう言って楢崎は、右手小指をグイっと関節とは逆方向にかなりの角度に曲げて見せてくれた。キャッチングの基本はよく「型を作ってそこにボールをはめる」と言われる。両手でボールを収めるポケットを作り、握力で取るのではなく穴にはめ込む感覚だ。なるほど確かに小指はボールの勢いをダイレクトに受ける箇所のようにも思える。しかしだからと言って、小指が裏返るほどの負担がかかるとは...。
「オレの感覚では親指、人差し指、小指がキャッチングには重要だね。あくまでオレの感覚だけど。最近は野村が『どうやって捕ってるんすか?』って聞いてくるけど(笑)、普通に捕っているだけですよ。キャッチングの型は高校の時にはできていた。ただ、あの頃の指導はとにかく『前で捕れ、前で捕れ』で、でもあんまり前過ぎてもダメだから、うまいこと、要領よく自分で取りやすい形にしてきた部分はある。要領の良さでは定評があったのでね(笑)」
彼の言う"要領の良さ"とは我々の言葉でいう"貪欲さ"である。楢崎は「その時々でGKに必要な資質は変わってきたから、その流れを利用して上手くなってきたんですよ」とさらりと言ってのける男だ。これには「正剛はこれだけのキャリアを持ちながら、偉ぶらない。今も伸びている。これはすごいこと」という、ジェルソンGKコーチの証言とも合致する。「彼はプロフェッショナル。正直、僕のトレーニングはキツい(笑)。でも、信じてくれる。だから38歳でシーズンフル出場できる。39歳の今年もフル出場できるし、してほしい。600試合は普通じゃない記録だよ」とも。
確かに、普通じゃない。21年で600回目のリーグ戦にも「ドキドキなんてするわけない」と苦笑する大ベテランは、そのメンタルからして尋常ではない。39歳にして成長中、600試合にして通過点の偉大なる守護神が、いよいよ前人未到の大台へ足を踏み入れる。
「赤鯱新報」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。
【10/9練習後の選手コメント】川又堅碁「求められたプレーをした上で、点を取りたい」森勇人「僕みたいな選手こそ頑張らないといけない」矢田旭、竹内彬選手のコメントも(1835文字)
http://www.targma.jp/akasyachi/2015/10/09/post4965/
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http://www.targma.jp/akasyachi/2015/10/09/post4961/
【10/8練習レポート】練習再開2日目は崩しの局面に特化してのミニゲームで選手たちは白熱。「今日はオフェンス4人のコンビネーションを見た」(西野朗監督)(1875文字)
http://www.targma.jp/akasyachi/2015/10/08/post4924/