なぜ「J2が面白い!」と感じるのか? 大宮と愛媛での取材現場で考えたこと
2015 10/09 10:38
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今回は宇都宮徹壱公式メールマガジン「徹マガ」からJ2に関する記事になります。
なぜ「J2が面白い!」と感じるのか? 大宮と愛媛での取材現場で考えたこと(徹マガ)
2015年09月30日更新
今季からJ1が2ステージ制になったことで、唯一の2回戦総当り&1ステージ制の全国リーグはJ2のみとなった。フェアでわかりやすい上に、6位までが参加できるJ1昇格プレーオフも風物詩として定着した。もちろん、過去2回のプレーオフ勝者が、いずれも残留を果たせなかったという現状については、きちんと精査する必要はある(今季のモンテディオ山形も残留は厳しそうだ)。しかしJ2という視点に限っていえば、戦力的に厳しい地方の中小クラブにプレーオフシステムが好影響を与えている事実は見逃せない。今季で言えば、まさに愛媛FC(現在7位)が該当する。
実は今季、愛媛が当初掲げていた目標は「勝ち越し」だったという。ここ5シーズン、毎年のように順位を下げ(11位→15位→16位→17位→19位)、J2での9シーズンで一度も勝利数が敗戦数を上回ったことがない愛媛。加えて、もともと強化予算が極めて限られているところに粉飾決算が明らかとなり、春季キャンプを断念する厳しい環境下でのスタートとなった。そんな彼らにとり、J1昇格やプレーオフ進出ではなく「勝ち越し」を目標としたのは、きわめて妥当な話であった。
ところがシーズンが始まってみると、4月に4連勝を達成すると7月から8月にかけてクラブ史上初の5連勝を達成。今節、横浜FCとのアウエー戦では1―2で敗れてしまったものの、7月22日から9試合負けなしでプレーオフ圏内の6位まで順位を上げた。今季からチームを率いる木山隆之監督は、8月の時点で目標を「プレーオフ進出」に上方修正。選手に話を聞いてみても「こんなに小さなクラブでも、チームが団結すれば結果を出せることを証明したい」とか、「これまで以上に身体のケアに気を配るようになった。ピッチを離れても、どうすれば勝利を貢献できるのか考えている」など、意識の変化を感じさせるものが少なくなかった。
愛媛躍進の理由については、スポーツナビでの連載『J2・J3漫遊記』で詳しく触れる予定だが、ここではプレーオフ進出というモチベーションに加えて、長いシーズンを活かしてのチーム強化と修正が可能だったことを指摘しておきたい。つまり、J2のフォーマットがもたらしたサプライズだったと見ることも可能であり、それこそがリーグ戦本来の面白さなのだとも思う。そんな今季のJ2を心底楽しんでいるのは、もちろん愛媛のサポーターばかりではない。
先日のNACK5では、試合前に「グラスゴーからやって来た」というスコットランド人の大宮サポから話を聞く機会があった。「たぶん、このままいけばアルディージャは来季はJ1に行けるだろうけど、J2も悪くないなと思っているよ。2ステージ制はやっぱり馴染めないし、今季みたいにたくさん勝つのは難しいだろうし(苦笑)」。その上で、もともとレンジャーズのファンだったという彼は「トップカテゴリーだから無条件に面白い、という話ではないよね」と付け加えた。余談ながらレンジャーズは今季、スコティッシュ・チャンピオンシップ(2部)に所属している。
<この稿、了>
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