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「タイトルへの執着心」から見たCS準決勝 今日の現場から(2016年11月23日@等々力)【宇都宮徹壱WM】

2016 11/24  18:10

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は宇都宮徹壱ウェブマガジン「宇都宮徹壱ウェブマガジン」からCS準決勝、川崎フロンターレ対鹿島アントラーズ戦に関する記事になります。



【無料記事】「タイトルへの執着心」から見たCS準決勝 今日の現場から(2016年11月23日@等々力)宇都宮徹壱ウェブマガジン
2016年11月24日更新

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 23日の勤労感謝の日は、J1リーグの年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)準決勝、川崎フロンターレ対鹿島アントラーズを取材するべく、等々力陸上競技場を訪れた。試合は、後半5分に金崎夢生が挙げた1点を守りきった鹿島がファイナル進出。「無冠とオサラバ」を合言葉に大会に臨んだ川崎は、これが等々力での今季ラストゲームとなってしまった。試合後の中村憲剛の涙を見て、今大会について感じたことを記す。

 20日前の11月3日、ここ等々力で私は川崎のホーム最終節を取材している。その時の模様についてはこちらに書いたとおり。前節終了時、首位浦和レッズを1ポイント差で追う川崎は、逆転で年間1位になれる可能性を残しており、実際に前半終了時には2-0でリードしていた。しかし、対戦相手のガンバ大阪に今季唯一となる逆転負けを喫したことで、彼らの夢は儚く潰えることとなった。

 この時のコラムで私は「川崎にとって救いなのは、今季はCSというチャンスが残されていることだ」と書き、さらに「タイトルに飢えた川崎がトーナメントに加わったことで、最後のCSは思いのほか盛り上がりそうな気配を感じる」と結んでいる。そして当時の心情としては、川崎に悲願のタイトルがもたらされることを願ってもいた。それだけに、期待と真逆の結果に終わったことは残念でならない。そして川崎は今月、二度にわたってタイトル喪失の悲哀を味わうこととなった。中村が失意の涙を浮かべるのも当然であろう。

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 確かに川崎は、小林悠や大島僚太を欠いていた。ベンチスタートとなった中村も、コンディション万全ではなかった。それでも、年間順位での鹿島との勝ち点差は13。今季のリーグ戦でも川崎が1勝1分けで勝ち越している。そして何より、自分たちのほうがタイトルへの渇望感が強い──多くの川崎サポーターは、そう考えていたのではないか。しかしながら、ゲーム終盤での鹿島の的確かつ魂のこもった守備を見ていると、実のところ17冠を誇る彼らのほうが、より「タイトルへの執着心」を見せていたように私には感じられた。その意味では、いささか相手が悪すぎたと言えるのかもしれない。

 川崎と鹿島、それぞれの「タイトルへの執着心」が極めて明快に提示されることとなったのは、やはりCSというシステムに負うところが大きかったと思う。わずか2シーズンで終わってしまうこの大会については、その導入の過程から突然の終焉に至るまで「何だかなあ」と思うことの連続であった(先週末のJ2やJ3の最終節の盛り上がりを思うと、なおさらである)。しかし今回の川崎対鹿島の準決勝は、上記の理由から「非常に良いものを見せてもらった」という思いのほうが強い。

 準決勝に勝利した鹿島を、CS決勝で待ち受けるのは年間王者の浦和。今季は13年ぶりにルヴァンカップを制しているが、唯一のリーグ優勝は06年。10年ぶりとなるタイトルへの渇望はひとしおであろう。「タイトルへの執着心」という局面だけを見るならば、CSという大会は悪くないシステムなのかもしれない。とはいえ、レギュラーシーズンが11月3日で終わってしまい、それから中19日も空いてしまう日程については、やはり度し難いものを感じる。

 ゆえに、今年最後のCSのファイナルが盛り上がることを願う一方で、来季のJ1が1シーズン制に戻ることについては内心ほっとしている。そして、まだ天皇杯を残している川崎には、今季最後のタイトルを懸けてさらなる奮起を期待したい。もっとも、FC東京との準々決勝が行われるのは、1カ月後の12月24日。この長い中断期間で、選手のコンディションとモチベーションを再びマックスに引き上げるのは容易ではない。負ければ、その時点で今季が終わりの天皇杯。今季限りで退任する、風間八宏監督の手腕にあらためて注目したい。

<この稿、了>


宇都宮徹壱ウェブマガジン」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。


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アルウィンで迎えたJ2最終節 徹壱の日記2016 11月14日(月)~11月20日(日)
http://www.targma.jp/tetsumaga/2016/11/22/post4144/

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