【情熱の分析家・河治良幸の一言解説】クラブ批判(?)の本田圭佑が陥った窮状と今後の展望とは?
2016 01/07 22:15
本田、またしても伊メディアから酷評「口は雄弁、プレーは沈黙」(フットボールチャンネル)
イタリア・セリエA第18節が現地時間の6日に行われ、日本代表FW本田圭佑が所属するミランはホームでボローニャと対戦し0-1と敗北を喫した。
この試合で先発出場を果たした本田は、2度チャンスを作ったものの決定的な働きをできずに65分に交代している。イタリア『スカイ・スポーツ』『ミランニュース.it』『トゥットメルカートウェブ』は揃って同選手に「5」の低評価を与えた。
とりわけ『ミランニュース.it』は「口は雄弁だが、プレーでは沈黙した(少しのアクションしかなかった)」とクラブに対するコメントが話題を呼んだ本田を批判した。一方で、『トゥットメルカートウェブ』は「ボールを持った時は危険を作ったが、しばらくして味方をサポートするためにマークを外す動きに回った」と一定の評価を与えた。
情熱の分析家・河治良幸の一言解説
イタリアのメディアが一斉に報じた本田圭佑のクラブ批判(過去に獲得した選手に関する発言)には多分に誤解があったようですね。後日、クラブ公式TVの『ミランチャンネル』ではガッリアーニCEOに対して本田が事情説明をしたことが伝えられました。
筆者自身、現地取材をしている訳ではないので情報からの整理になりますが、当初の報道では共同通信社の英語版で応じたインタビューにおいて“ロビーニョやカカなど、ピークを過ぎた名選手を獲得していることが問題”という趣旨の発言が、実際はそうした名選手を獲得しているにもかかわらず、チームとして結果を出せていないことを指摘するものだったようです。
こうした誤解が起こるのも、昨年9月の“クラブ批判”が影響していることは間違いありません。ただ、イタリアメディアの訂正が入る前に、ミハイロビッチ監督は記者会見で冷静な対応をしたと思います。実際にボローニャ戦に向けた練習から本田は[4-4-2]の右サイドハーフでテストされ、そのままスタメンを飾っています。少なくとも指揮官と本田の中で、人間的な部分のわだかまりは解消されていると考えて良さそうです。
ただし、周囲の評価はまた別の話。発言問題がくすぶり続けている状況に変わりはなく、結果を出さなければ風当たりが強くなるのは仕方ないところです。もっとも、この日の本田は決定的なプレーの精度を欠いたものの、“右のホットライン”として高評価を得ているアバーテとの見事なコンビからチャンスを作っており、むしろ本田からチェルチに交代したことで、攻撃の機能性が下がり、守備のリスクも高まった様に見えました。
イタリアのメディアはプレーをしっかり見ているものの、ドイツのような細かいデータに基づく評価はあまりしないため、得点、アシスト、失点、大きなミスといった勝敗を左右する結果が採点に直結します。その意味ではゴールもアシストもなく、65分に交代した本田の評価が低くなるのは想定内ですが、今回は周りの攻撃陣も総じて低い評価だったことも認識するべきです。
ミハイロビッチ監督が浮上のプランとして[4-3-1-2]から[4-4-2]にシステムを変更し、元ミランのプリンス・ボアテングを復帰させるなど、競争も立場も変わった中で、本田としては監督の信頼を得るパフォーマンスを継続しながら、右サイドハーフからでもゴールやアシスト、それらに直結する起点のプレーなど、分かりやすい結果を出していく必要があると思います。ここまでも逆境を跳ね返して輝きを増してきた選手なので、そこは期待したいところです。