西野監督はなぜ今季で契約満了となったのか。名古屋での2年間を振り返る(尾張名古屋の健筆家・今井雄一朗による一言解説)
2015 10/14 08:47
少し前の話題となりますが名古屋グランパスより「西野朗監督契約満了」が発表されました。
西野 朗監督、契約満了のお知らせ(名古屋グランパス)
西野 朗監督(60)が2015シーズン末をもって、契約を満了することが決まりましたのでお知らせいたします。
【尾張名古屋の健筆家・今井雄一朗による一言解説】
10月4日、奇しくも楢崎正剛の通算600試合出場が達成された試合に敗れた翌日に、西野朗監督の契約満了が報道され、その夜にクラブからも正式リリースが発表になりました。形としては「退任」ですが、ナビスコカップの決勝トーナメント初戦敗退と天皇杯の初戦敗退が、クラブの評価を下げてしまったと言えるでしょう。おそらくはこの時点でクラブ内での契約更新の是非が本格的に問われ、そしてリーグ戦における今季の目標とされてきたチャンピオンシップ進出が絶望となった柏での敗戦を受け、発表につながったのだと推測されます。
個人的には残念な決定でした。西野監督が引き継いだのは主にDFラインの主力を中心に大幅に戦力が削られたチームであり、さらには抜擢せざるを得ない若手はストイコビッチ前監督時代にあまり強度の高いトレーニングをできなかったため、「トレーニング慣れしていない」と監督が嘆く状態にありました。この2年間で常に5~10人前後の負傷者を抱えることになった一因には、もちろん事故的なものもありましたが、そうした背景があったのも確かです。それゆえに西野監督の采配は常に「やりくり」だったという印象が拭えません。
それでも我慢強く選手のフィジカルベースを向上させ、磯村亮太や本多勇喜、矢田旭を主力に育て上げ、田口泰士を日本代表クラスにまで成長させることで昨季の終盤には堅守速攻というスタイルを確立しました。昨季最終戦で浦和に快勝を収めたのは、まぎれもない実力によるものです。
しかし今季は負傷者の数が膨れ上がり、31人のメンバー中動けるのが18人ほどになった時期もある異常事態も経験しました。予定されていた練習試合をキャンセルし、紅白戦も満足に行えない中でチーム力を向上させるのは至難の業と言わざるを得ません。もちろんナビスコカップ準々決勝で物議を醸した采配など指揮官自身のミスがなかったとは言えませんし、本人も認めているように「コンスタントにシーズンを戦わせるのがマネジメント」です。ただし負傷は時の運でもあり、コントロールしきれる部分ではありません。
惜しむらくは、西野監督は選手を信頼しすぎた面がありました。個々の特徴を生かしたスタイルを追求し、起用は「ここでお前をこの位置で使うからには、その意図はわかるな?」という采配を貫きました。それゆえ時に選手への説明不足に陥ることもあり、一部の選手からは「意図がわからなかった」という意見が出ていたことも確かです。ただしこれは選手側の問題であることも、忘れてはいけません。要するに説明をしない監督、説明を待ってしまう選手の「どっちもどっち」という齟齬が生じてしまっていたのが、この成績に対しては痛恨でした。
主力が入れ替わった経験の少ないメンバーで、最終ラインの再構築をしながら、上位進出を求められる。実に難解なミッションを課せられた西野監督は、自分の感覚としては及第点以上の価値ある仕事をしたと思います。