無限の引き出しを持つ「ドラえもん」安間貴義コーチのメニューでたくましさを増す若者/平岡翼【FC東京】
2015 09/10 07:10
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今回はFC東京を中心としたWEBマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」から平岡翼選手に関する記事になります。
【青赤ログ】コラム◆無限の引き出しを持つ「ドラえもん」安間貴義コーチのメニューでたくましさを増す若者/平岡翼(2015/08/25)(トーキョーワッショイ!プレミアム)
2015年08月25日更新
青赤ログ◆無限の引き出しを持つ「ドラえもん」安間貴義コーチのメニューでたくましさを増す若者/平岡翼
いろいろな練習が出てくるんですよ! 毎日まいにち、新しい練習が。
――平岡翼
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「あくまでも試合に出るためのトレーニングが多いですね」
平岡翼は自らに課された練習を振り返り、こう言った。
ベンチメンバー外となった選手たちが何をしているかと言えば、それはもちろん練習だ。小平グランドを見学しているファンなら、メンバーとは離れた場所で、数人の選手が全体練習とは異なるメニューに励む姿を見かけたことがあるだろう。トレーニングの指揮を執っているのは安間貴義コーチだ。
安間コーチの指導歴は長い。現役を引退した最終所属チームであるHonda FCで監督に就任すると、ヴァンフォーレ甲府とカターレ富山でいずれもコーチを経て監督に就任している。甲府のコーチ時代には、米田徹コーチ(現FC岐阜)などのスタッフと、控え選手の育成に全力で取り組んでいた。監督となっても「育成型」であり、すべての選手が一日ごとの練習で右肩上がりに成長できるように、という心構えは変わらなかった。
その姿勢はいまの小平グランドでも変わらない。
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――練習試合の対湘南ベルマーレ戦では4-4-2の右サイドハーフ。あのようにスペースにパスを送ってもらい、ドリブルかシュートの選択に持ち込むプレーが、パフォーマンスを出すには最適?
平岡翼 そうですね、そういうプレーが出ないと、自分らしさが出ないので。湘南戦とかも振り返って、自分で観たんですけれども、もっと自分から走り出すタイミングを増やさないといけないな、という感じだった。昨日、きょうと、そういうことを踏まえた練習を安間(貴義)さんもしています。
たとえば、ある日、安間コーチは平岡たちにこんなトレーニングを課していた。三人一組で、ひとりはパサー(ボールのリザーバー)となる。ひとりはレシーバーで、ひとりは相手ディフェンス役だ。これらの役割を入れ替えながらすべての立場で、スペースに出た(出す)スルーパスへの対応を学んでいく。
スルーパスが放たれたら、いわゆる「よーいドン」でボールを受ける攻撃側の選手と、守備側の選手がダッシュ。レシーバーはディフェンスよりも先にボールにさわり、自分のものとしたらある程度運んでからシュートをゴールにねじ込む。レシーバーの立場なら、パスのコースとスピードを読み、タイミングよく飛び出し、相手に掴まらない走り方とからだの使い方でボールを奪い、相手をかわし、シュートを撃たなければならない。
全力疾走に近い運動が求められ、体力も費やす。実戦的で、かついろいろな項目の能力が鍛えられる。
――足りないところはわかってくるものなんですか。
平岡翼 安間さんは(具体的に)口に出してくれるんです、自分に足りないところを。だから用意してくれている練習の意図をわかったうえで、自分に足りないところを理解しながら取り組める。
ミックスゾーンで平岡と話していると、安間コーチが「ちゃんと話しているのか?」「ドラえもんとか言うなよ!」とシャウトし、去っていく。平岡は「("ドラえもん"と)自分で言ってるんじゃないですか」と、苦笑いだ。
ドラえもんの異名は、別に体型のことを指しているのではない。
――こうした力を上げる役にも立っている?
平岡翼 そうですね。個の力、ぼくの場合なら、相手を外すことさえできればスペースが生まれて自ら仕掛けることもできる。つまり、試合に出るために取り組んでいることが、自分のいかにいい選手に見せるかということにつながっている。それは言い換えれば、個の力が上がっている、ということにもなると思うんです。
――で、ドラえもん。
平岡翼 いろいろな練習が出てくるんですよ! 毎日まいにち、新しい練習が。
安間コーチの頭のなかはまるでドラえもんの四次元ポケットのようだ。無限のヴァリエーションを誇り、後からあとから、いくらでもアイデアが生まれてくる。きっと一年では消化しきれないほどの練習方法があるのだろう。
大事なことは、冒頭に「試合に出るため」と平岡が言っていたように、目的を持ち意識づけをしながら練習しているということだ。練習試合は、ただそれに勝つためではなく、公式戦に出た場合によいプレーができるように、チームのやり方に沿って能力を発揮するためにおこなっているし、日々の練習も同様だ。
もちろん、結果的に個人能力もアップしているのは、これも平岡の言うとおり。それはそれで、試合に出られる出られないとは別に指標となり、個々の自信につながっているはずだ。
――チームのやり方に対応していく難しさは
平岡翼 いまのチームで言うと、監督は守備を重視しています。守備ができない選手はバランスを崩す。いま出ているメンバーを見ても、守備ができてオールマイティな選手が多い。そこがないといけないのかなと思うんですけれど、そういったなかで、守備もでき、自分の色を出すこともできていけたら、いつかは特長を活かしてもらえるようになるはずです。そうなるように、いまはチャンスを掴むために取り組んでいます。
ベンチ外の選手は、たとえ試合に出られなくとも、練習で己を鍛えておく必要がある。プロの仕事としてサッカーをしているのなら、なおさらだ。そしてもちろん、メンバーから外れて悩みはしても、すぐに諦めることはない。こうした選手たちの傍らには適切なコーチがいることが望ましい。その意味では安間コーチの獲得は、榎本達也や前田遼一などの選手の獲得とともに、よい補強だった。平岡たちが安間コーチのもと、少しずつ成長する。それがチーム全体の力をも押し上げるのだと信じたい。
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