[J論] - これを読めばJが見える

論ニュース日本サッカー関連ニュースを分かりやすく解説

技術と戦術も重要だが......シンガポール代表とマッシモ東京の類似点

2015 06/19  09:01

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回はFC東京を中心としたWEBマガジン「トーキョーワッショイ!プレミアム」からFC東京に関する記事になります。



【臨時コラム】技術と戦術も重要だが......シンガポール代表とマッシモ東京の類似点(2015/06/17)トーキョーワッショイ!プレミアム
2015年06月17日更新

kodaira_04May2015-640x424_1.jpg

【臨時コラム】技術と戦術も重要だが......シンガポール代表とマッシモ東京の類似点

技術、戦術に於いて日本代表がシンガポールを遙かに上回っていることはあきらかだ。それでも結果は0-0という互角のスコアだった。つまり、技術や戦術は、たしかに重要ではあるが、勝敗を決着させる絶対的な要素ではないということになる。

以前、FC東京のマッシモ フィッカデンティ監督が、多摩川クラシコを前に語った言葉を思い出した。
FCバルセロナやレアル・マドリーに対するアトレティコ・マドリー、浦和レッズやガンバ大阪に対するFC東京の戦い方を例に挙げ、すごい選手を揃えて攻撃的なサッカーをするチームに対し、そうではないチームも勝つことができる、と、説いていた。

「サッカーは、時には、弱いチームが、献身性や、しっかりと仕事をやることによって強いチームに勝つことができる、唯一のスポーツ」
「成果をもたらすためには、まずは失点をしない」
「(アトレティコ・マドリーが)彼我の戦力差を理解したうえで、優位に立っている相手に対して結果を残した。それはやるべきことができていた証明です」
(以上、マッシモ フィッカデンティ監督の発言。
http://www.targma.jp/wasshoi/2015/05/01/post5417/ から)

失点をしない。その目的のためにすべきことをする。シンガポール代表はこれができていた。ほとんど攻撃らしい攻撃をせず、守備に傾注した。日本代表に比べれば拙い印象になる。しかし肝心のゴール前の守備に於いては、ほとんど致命的なミスはなかった。むしろよく集中して守り、その集中力が最後まで切れなかった。
日本代表のボールホルダーがいい状態でパスやクロスを送れないようフィールドプレーヤーが最後までついていき、限定されたコースのシュートはイズワン・マフブドが防いだ。一度はゴールラインを越えそうになったボールに飛びつき、すんでのところで弾きだした。ゴールマウスを逸れるボールは完全に見切っていた。自陣で奪ったボールに対しては、はっきりとクリアするか、安全な運び方で自分たちのゴールから遠ざけたうえで相手ボールにした。
最後までやるべきことをやっていた。

よく訓練されたチームは軍隊のように見える。ハードワークとイコールである高速カウンターで一世を風靡した、ヴァレリー・ロバノフスキー監督時代のディナモ・キエフのように。

シンガポール代表にも、ロバノフスキーのディナモ・キエフにも、共通して言えるのは、ある目的に対して練度を高め、準備し、いざ本番の試合になったら集中するということができていたということだ。
もう一度繰り返す。
練度を高め、準備し、集中する。
これはマッシモ東京が「失点を少なくする」「負けない」ために、常日頃繰り返していることでもある。

個人的に、てっきりマッシモ フィッカデンティ監督は戦術家かと思っていたのだが、そうではないことに、最近、気がついてきた。
たしかにフォーメーションは頻繁に変えるが、そこは重要ではない。大事なのは、戦術がなんであれ、目的を定めてしっかりと準備をすることだ。そしてこここそが、マッシモ東京を信頼できるところだ。
マッシモ フィッカデンティ監督の率いるFC東京がファーストステージで3位につけているのは、戦術そのものが優れているからではない。技術も戦術も、おそらく東京より優れているチームはほかにある。東京が結果を残しているのは、前述の、練度を高め、準備し、集中する集団になっているからだ。

その証拠が、先日、みなとみらいのマリノスタウンでおこなわれた横浜F・マリノスとの練習試合だ。この試合に臨むにあたり、東京は小平で、公式戦を迎えるのと同様の間隔/感覚で入念な訓練を施した。戦術練習に該当する部分では撮影を禁じられた。
結果として、故障者と日本代表招集者を合わせて多くの選手を欠いていた東京は、マリノスに1-2で勝利した。東京の選手たちは前半45分間を0-1とリードしても気を引き締めて意見交換をし、メンバー交替の激しい時間帯に、マークの変更に脳のキャパシティをとられた圍謙太朗の一瞬の判断ミスもあって追いつかれたが、直後に奪い返し、競り勝った。気迫がみなぎり、集中していることが手に取るようにわかった。週末の朝早くに集まったその時間を無駄にすることなく有意義にしようという決意が感じられた。

マッシモのカルチョを古典的なカテナチオにすぎないと批判することはたやすい。しかし問題はそこではない。戦術の新しい、古いではなく、新しかろうが古かろうが、そのやり方で臨むと決め、試合に向けて準備していくこと、いざ試合が始まったら、しっかりと集中して渾身のプレーをすることが重要なのだ。

「あらかじめ決まっていることをやるだけなら、簡単じゃん」などと思わないように。即興的なアイデアを披露するのも簡単ではないが、あらかじめ決めたことを90分間、最初から最後まで貫徹するのも簡単ではない。身の回りの日常生活や仕事を振り返り、それができていると、自信を持って言える人間がどれだけいるだろうか。

埼玉スタジアムでのシンガポール代表は、とても勤勉かつ勇敢に戦った。その姿勢は、強者に立ち向かうすべてのチームが応用できるものだ。そしてFC東京は、既にその姿勢を身につけつつある。



トーキョーワッショイ!プレミアム」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。


【今週の小平】Preview◆一年間の結末を見据えての再起動。ベアスタ後も戦いはつづく/「対策は整えた。あとは仕上げるだけ」(梶山)「鳥栖戦でけがをしましたから、その意味ではまた鳥栖戦からスタートするのもいいのかなと個人的には思っています」(石川)マッシモ フィッカデンティ監督、権田修一、太田宏介、梶山陽平、石川直宏(2015/06/18)
http://www.targma.jp/wasshoi/2015/06/18/post5720/

【青赤ログ】コラム◆また得点を、とのファンの要求に困惑。「得点を獲るキャラじゃない」と苦笑しつつも「すべてを吸収したい」と前向きな橋本拳人(2015/06/17)
http://www.targma.jp/wasshoi/2015/06/17/post5718/

【無料記事/蹴球の余白】ぐる旅◆小平駅前「丸徳」(2015/06/15)
http://www.targma.jp/wasshoi/2015/06/15/post5704/

J論 最新テーマ: ニュース に関するコラム

投票

マッシモ・フィッカデンティ監督について(0票)

FC東京について(0票)

論 最新ニュース