【FC東京】<分析>練習試合とプレシーズンマッチに見る点を獲りに行く意識
2015 03/05 12:24
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【分析】練習試合とプレシーズンマッチに見る点を獲りに行く意識(2015/02/26)
2015年2月26日更新
2月21日におこなわれたJリーグプレシーズンマッチ対アビスパ福岡戦後、マッシモ フィッカデンティ監督は「あらゆる観点から自分たちにとって役立つ練習試合でした」「何度もペナルティエリアまで運んでチャンスをつくれていた」「ゴール前の精度をなんとしても高めていかなければいけない」と試合を振り返った。
石川直宏ら一部の選手がダブルヘッダーになるようにタイムスケジュールを組んで、午前の練習試合対福岡大学戦、午後のアビスパ戦を消化したことからも、いかに実戦形式で狙いとするトレーニングができるかを頭に入れてこの日に臨んだことがわかる。
2013年のFC東京は2-1で勝つ試合を増やし、過去年間最多得点の61得点を記録したが、目標とするACL圏内には手が届かなかった。
その反省から2014年は失点しないことを強く意識して取り組み、失点を47から33に減らした。しかし同時に、得点も61から47に減ってしまった。
得点も、失点も、ともに14マイナス。
行きつ戻りつのままでは強くなれない。失点を少ないままに、得点を増やさないといけない。
さいわい、よい兆しはある。
対福岡大学戦と対アビスパ福岡戦で、それぞれビューティフルゴールがあった。
対アビスパのほうは後半17分の2点め。日本代表の森重真人、太田宏介、武藤嘉紀がそれぞれタイミングよく連動、フィード→クロス→ダイビングヘッドと、流れるような手際で相手ゴールを陥れた。
昨年は平山相太を除くとなかなか合う選手がいなかった太田のクロスは、ディフェンスラインとゴールキーパーのあいだに送られたそこに2トップの前田遼一と武藤がよく飛び込んで、きちんと活かされていた。
太田宏介は言う。
「(前田)遼一さんとよっち(武藤嘉紀)、ことしバンバン獲ってもらわないといけないひとにアシストできたことはよかった。去年からクロスを上げつづけてきたことが理解してもらえて、あまり日数の経っていない遼一さんにもゴール前に入ってきてもらえたので、これをリーグが始まってもつづけていきたい。チームの武器となるものですから、もっと磨きをかけていきたいと思います」
昨年、特に序盤は太田のクロスと武藤の突破を除くと攻め手に欠けていた。そこからヴァリエーションを増やさなければいけないと考えると、太田のクロス依存ということになってしまうが、もともと持っている長所をさらに伸ばしていくのはいいことだ。太田の言うように、磨きをかければ武器になる。昨年のワールドカップで頻出したスーパークロスからのゴールを思い出そう。世界水準の試合以外ではビデオゲームのなかにしかなさそうな、左サイドからグイッと矢のように曲がって進入してくる太田のクロスはとても精度が高い。あまり活かされなかったこの武器を活かして太田のアシスト数が昨年の倍になるなら、それに越したことはない。
クロスに飛び込む側の2トップが合ってきていることも朗報だ。
前田遼一は「(太田)宏介がいいボールを入れてくれた。山形との練習試合のときはタイミングが遅れていましたが、そうならないように意識して入りました」と言い、チームに自分を合わせていこうとしている旨を告白した。
「(クロスが)下だと滑るから上のほうがいいかも」と太田宏介に言って臨んだセカンドハーフ、そのとおりドンピシャのボールが来た武藤。彼も呼吸は合ってきている。
クロスだけではない。武藤は「ウラを狙うなかでつなげていたので自分自身もやりやすかった」と言っている。ただ足許でつないで廻すのと、タテに行く、ウラを狙う、ゴールを陥れるという意識のもとに前段階として廻すのとでは、まるで意味がちがう。その意味では、チーム全体が点を狙う姿勢になっていた。
これがより顕著に出たのは練習試合の対福岡大学戦だった。石川直宏は松田陸、東慶悟、林容平がらを使ってサイドからの崩しを徹底していた。
石川直宏は言う。
「そういう部分はきょうのこの試合(対アビスパ福岡戦)でもやりたかった。特に練習試合では、サイドもそうですけれども、前の(東)慶悟や林(容平)との崩しを狙いを持ってやれていた。流動的にサイドからも中央からもせめて得点することができたので、そういうプレーをこの試合でもやりたかった」
主に右サイドからかなり深いところまでえぐってのクロスが多かったが、もちろん反対サイドからも攻めるし、中央突破もある。ガンガン攻め、それがゴールに直結する。点を獲れる匂いが漂うサッカーで、無骨な点獲り屋、林容平の得点力、タテに入っていける東慶悟の運動量、松田陸の積極的なオーバーラップ、すべてが活きていた。
白眉は前半30分の3点め。
自陣からのフリーキックに立ったのは、松田陸、高橋秀人、吉本一謙。
高橋はちょこん、と横にいた吉本に渡す。運ぼうとするが前にはパスコースがないので、左隣の丸山祐市へ。丸山は相手のプレッシャーに対してあわてず、ゆっくりとゴールキーパー榎本達也も戻す。
榎本も落ち着いていた。相手がプレッシャーをかけにくる前に、中盤に浮き球を送る。
これを見事なポストプレーで自分の制圧圏内に落としたのが林容平だった。
林が右へ展開すると、これを受けた松田陸がオーバーラップ。松田は中央の東慶悟へとクロスを送る。これを東の隣で受けた石川直宏が、林に絶妙なラストパス。林は松田にはたいたあと、前線に動いてきていたのだ。林は憎たらしいほど冷静に、これを枠内に蹴り入れた。
自陣深くからのリスタートで、パスをつなぐことにはこだわらず、リスクの低い箇所を経由して、相手のあいだを衝いたボールを林が落とす。一見、背が高くもないし、ポストプレーをするタイプにも見えないが、じつは万能型の林がサイドに送る。
サイドバックの松田が上げたボールをふたりが待ち受け、三人めの林がゴール。
ショートカウンターでなくとも点は入るのだ、ということを再認識させてくれる得点だった。
いま、東京が、チームとして点を獲れるようになろうと試行錯誤していることはまちがいない。この姿勢があったからと言って進歩するとはかぎらないが、少なくとも退歩はしない。補強に頼らず強くなれるか。熟成の過程を見守りたい。
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