【情熱の分析家・河治良幸の一言解説】長谷部が「若手」の突き上げ不足を嘆く。韓国、豪州との比較で考える日本代表の選手起用
2015 01/28 19:47
長谷部「若手の突き上げ足りない」アジアで勝てない現状に危機感(YAHOO!ニュース)
アギーレ・ジャパンの主力2人が27日、若手の台頭を呼びかけた。アジア杯8強で敗退した日本代表のMF長谷部誠主将(31)=フランクフルト=が羽田空港からドイツへ、DF長友佑都(28)=インテル=は成田空港からイタリアへ出国。長谷部は育成年代も含め、アジアで勝てない現状に危機感を募らせた。長友はFW武藤嘉紀(22)=F東京=、MF柴崎岳(22)=鹿島=に期待をかけた。
【情熱の分析家・河治良幸の一言解説】
ブラジルW杯を率いたザッケローニ監督が主力を固定したことには賛否両論ありましたが、日本代表を引き継いだアギーレ監督もアジアカップ前に行われた6つの親善試合のうち、最初の4試合は多様な選手をテストしたものの、結局はブラジルW杯組を呼び寄せて主力を固定しました。
UAEとのPK戦の末に準々決勝での敗退が決まった翌日、霜田技術委員長は引き続きアギーレ監督が指揮する方針を明かすと共に、今後は再び若手やフレッシュな戦力をテストしていくことを宣言しています。
しかし、今回の23人のメンバーの中でさえ、主力とサブの序列がはっきりしていた状況で、本当にここから突き上げや競争が起こっていくのか。結局、ホームの親善試合である程度の実力を発揮できても、シンガポールで惨敗したブラジル戦のように、強豪との対戦や厳しいアウェイの試合では現在の主力との差が明確に出てしまうかもしれません。
これは今大会で途中出場ながら出番を得た武藤嘉紀も「自分の実力のなさが浮き彫りになった」と語り、UAE戦で同点ゴールを決めた柴崎岳も「大会を通して出られなかったのは実力だったり、信頼度というのはあると思う」と語ったとおり。アピール不足も含めて、競争の活性化や突き上げが足りなかったことを実感しているようです。
一方、若手や新戦力が序列を覆すほどのアピールができなかったという見方もありますが、そもそもチームとして競争を活性化しながらアジアカップに臨むという意識が、他国に比べて足りていなかったようにも感じます。例えば韓国は昨年10月からシュティーリケ体制がスタートしましたが、積極的に選手をテストし、結果に対して一部のファンから批判がある中でも競争の活性化を進めてきました。その結果、イ・チョンヨンやク・ジャチョルの負傷、ソン・フンミンの風邪といったアクシデントも乗り越え、フィールドプレーヤー全員が出場するという形でアジアカップ決勝にまで進んできています。
その韓国と決勝で当たるオーストラリアはブラジルW杯の後に欧州と中東でテストマッチを組み、Aリーグの選手も厳しいアウェイの環境の中でテストして、チームに組み込みました。"アウェイ5連戦"(ロンドンでのサウジアラビア戦は中立地開催)の最後となった11月の日本戦は1-2で敗れましたが、若手の能力を確認する意味で、良いテストになったようです。
確かに準備期間が限られる中で、主力を固定することは戦術面やコンビネーションの成熟につながりましたが、過密日程の中で4試合続けて先発メンバーが固定される結果を招きました。もちろんJリーグを含めて若手や新戦力がしっかりとアピールし、主力に刺激を与えていくことが大事なのは言うまでもないですが、テストの過程において厳しい環境を経験させ、そこで失敗しても再びチャンスを与えるなど、監督やスタッフからの努力も必要になってくると思います。
長谷部キャプテンが指摘している育成年代に関してはもっと根が深く、アジア各国のレベルが上がってきている事実から考えても不安は尽きません。ハード面だけでなく、ソフト面でも本当に抜本的な改革をしなければ手遅れになるかもしれませんが、「まず3年後のロシア」と考える必要があります。W杯を目指しながら、その過程でJリーグの実力者をしっかり拾い上げ、継続的に国際経験を積ませていく。そうした強化を真剣に考え、より良い手段を探っていく必要がありそうです。
ときたまシンガポールのブラジル戦のようなタフな試合において、そこで新戦力を試してダメだったから「はい終わり」では、同じことを繰り返す結果になるのではないでしょうか。