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『浦和vs札幌』興梠へのPKをサッカー競技規則解説。世界的にトリップに厳しい?【審判コラム】

2017 05/02  07:46

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回は審判批評を中心としたWEBマガジン「石井紘人のFootball Referee Journal」から浦和レッズ×北海道コンサドーレ札幌戦に関する記事になります。



【審判批評無料コラム:レフェリーブリーフィング前編①】浦和レッズ×札幌戦の興梠へのPKをサッカー競技規則解説。世界的にトリップに厳しい?石井紘人のFootball Referee Journal
2017年05月01日更新

今回の隔週レポートコラム(参考記事:コラムインタビュー)は先日開催された日本サッカー協会(JFA)審判委員会による『2017 第2 回 JFA レフェリーブリーフィング』(参考記事:メディアの判定力とは?)をレポートする。



上川徹JFA審判委員会副委員長「皆さん、こんにちは。前回、メディアブリーフィング(参考記事:ほとんどの選手が知らなかった競技規則第14条とは?)をやりました。それ以降の判定で意見交換がかわされた事象や意見交換はされてなくても我々が見て非常に難しい事象についてご説明します。この映像はクラブにも配信し、シーズン途中ですが『Jリーグがこういう傾向に流れているよ』というのを映像でお伝えすることで、シーズン途中でも戦術云々ではないプレーの方向の手助けとなればと思います。

今から15の事象をご覧頂きます。それでですね、今回は全員分ではなく、30個しかないのですが、こちらをお配りします。皆さん、映像を見た後に、こちらのボタンで判定して頂ければと思います。15の事象は『フィジカルコンタクト』『オフサイド』『ペナルティーエリア(PA)での事象』とあり、非常に難しいシーンです。最初にパっと見ると〇〇でも、二回目三回目と見ると●●になる。違う見方が出来る。実際に各クラブの強化担当者と電話でお話をすると、私も技術サイドの見方や考え方が勉強にもなっています。正しい判定と共に、皆が納得する判定を作るという部分で、クラブとの意見交換を参考にしています。

では、スタートします。レフェリーはコンマ何秒で判定しなければいけないのですが、今日は特別に、映像が流れた後に考える時間を10秒間与えます。映像も何回か流れますので、ミスはないのだろうなと(笑)

<15の事象が流され、記者の結果が出る>

では、ディスカッションしていければと思います。判定に対する意見が割れるというのは、それだけ難しい判定ということでもあります。

まずフィジカルチャレンジです。J3で起きた(第4節藤枝MYFC×栃木SC戦の78分にオーバーヘッドキックをねらった栃木選手の足が、飛び出した藤枝GKの顔面に激しく当たった)事象です。退場とジャッジされた方は18%ですが、これは退場です。おそらく皆さん、"ボールにいっている"ということで厳しい判定に持っていかなかったのかもしれませんが、"ボールにいっている"ことは審判側も承知しています。競技規則の考え方として、ボールに行けばいいという訳ではありません。そのプレー、行為が相手競技者にどのような影響を及ぼすか。このケースは、グレーの選手はGKが飛び出してくるのを十分に予測できると思います。そういう状況の中で、足を高く上げて、結果的に強く振り、相手の顔を強く蹴っています。非常に危険で、相手競技者を危険にさらしている。過剰な力が使われていると考えて、【著しく不正なファウルプレー】で退場です。これも意見交換しました。選手の気持ちも分かるんです。クラブの意見も分かりますけど、今の競技規則では相手競技者への安全は最大限に配慮してプレーしなければいけない。」



―選手はプレーを後で見て、どのように感じていました?



上川「クラブからフィードバックは頂いていないのですが、終わった後にアセッサーから話を訊いて納得はしていると。実際の試合でもレッドカードが示され、選手は脳震盪を起こして、プレーできませんでした。

では、次ですね。(参考記事:J1第6節川崎フロンターレ×ヴァンフォーレ甲府GKソンリョンへのドゥドゥのチャレンジは相手競技者の安全を脅かすタックルでレッド?)。実際の試合ではイエローカードが示されました。半数以上の方がレッドカードにしていますが、一番気になるのは左足です。オフサイドの笛が鳴ってから、GKと接触するまで、選手は避けられる時間はありましたか?我々はあると考えます。そういう中でスパイクの裏を残していくというのは、とても危険な行為です。実際には、右足がGKにダメージを与えたようです。ただし、右足だけの接触であればカードは出ますが、左足のように分かりやすいレッドではありません。レフェリーも非常に難しい見極めでした。オフサイドがあって、主審も副審の方を見ます。その後で接触が起きました。オフサイドの笛を吹いて、レフェリーのシャッターが閉まる可能性があります。レフェリーにはそうではなくて、選手のアプローチを見ていれば、オフサイドの笛を吹くことも大事ですが、次に起こりうることを予測する。レフェリーも、このシーンのようにスピードを緩めず、外からの角度で見に行けば接触が見えたかもしれません。レフェリーも映像を見てびっくりしていました。こういった接触が起きているのは分からなかったと。ルヴァンカップでは追加副審を置いてはいるのですが、このシーンは逆サイドからの監視になるので、見極められるか難しいです。なので、選手の皆さんには、"相手競技者の安全に配慮してプレーしてほしい"と。レッドを示せなかったからミスジャッジだというのもあるかもしれませんが、選手同士の気遣いもお願いしたいなと。

次は(J1第5節FC東京×サガン鳥栖戦42分の室屋成への吉田豊のスピードあるスライディングタックル)退場とされた方は?」



―はい。足の裏でいっているので。



上川「ありがとうございます。ただ、ボールにはいっているので、選手はファウルをとられたことも不満だったようです。ですが、足の裏で、スピードもあります。相手選手のどの部位に接触しているか。すねの上で、レガースは割れました。このファウルで負傷して、プレーはできませんでした。レガースがなかったら、どんな怪我になってしまったのか恐ろしいです。選手がボールに触れていることで"なぜ反則なのだ"というアピールも理解できますが、今年のスタンダードでも、ボールに行こうとしていても、足の裏をみせて、これだけのスピードで接触すると、相手を危険にさらします(参考記事:2017シーズンの競技規則スタンダード動画)。実際の試合ではレフェリーは最低限のイエローカードを示しましたが、レッドカード相当でした。レフェリーはボールに触れているのを見ていたので、判断が難しかったようです。副審が一番近くにいるのですが、副審の背中から見ているので、どういう風に足が接触しているのかが難しいです。もっと横から見られれば良かったのですが、レフェリーとも距離があるので。ただ、これは近付いて見極めるのは難しいです。次に考えるプレーが、ここ(ボックス付近)になるので。これが何もない状況ならば、近づくことができたと思います。ですが、チャンスはあります。その前のコンタクトプレーですね。一つ前のチャレンジを見て、"もしかしたら何かが起こるかもしれないな"という気付きを持てれば、ポジションと角度を変えられたかなと。これも強化担当者と話をしました。」



―リプレイやスローを見なければ、足を踏んでいるようにしか見えない。レフェリーもそう見えますよね。



上川「難しい判定です。ですので、最低限のイエローは出したのだと思います。」



―ファウルを受けた選手は、骨折したと思ったそうです。



上川「それくらいのダメージを受けるファウルです。」



石井:四審の位置からは難しいですか?



上川「第四の審判からどう見えるかはわかりませんが、スパイクの裏が上がっているのは見えるかもしれません。ただ、距離的には、主審や副審が近く、レフェリーが最低限のイエローは出しているので、四審が伝えるというのは難しいかなと。もちろん、誰も見ていないようでしたら重要なサポートになると思います。」



―最初のコンタクトで気付きを持てればということですが、二つ目のコンタクトは過剰になりやすいということがある?



上川「はい。一つ目のコンタクトで"ちょっと激しくいっているな"と気付きがあり、同じようにボールが残っていて、選手が勢いよく行くようであれば、何かが起きることが多い。実際にレフェリーはそういう状況を感じながら、試合をコントロールしています(参考記事:UEFA研修参加の岡田「イエローランプを点滅してと」)。

次がオフサイドです。ここはオフサイドポジションにいるかいないかの話になります。これは難しい判定が二つ続きます(参考記事:J1第6節浦和レッズ対ベガルタ仙台副審の連続したプライオリティが整理されたナイスジャッジ)。何が良いかというとポジションです。しっかりとラインをキープし、かつ正対しています。この後にもう一度難しい判定がありますが、しっかりと見極めます。ボールは後方に送られており、オフサイドはありません。さすがにこのスピードには正対できませんが、しっかりとラインをキープできています。難しい見極めが二つ続くと、精神的にも負けてしまいそうですが、素晴らしい判定でした。

次ですが、これも(参考記事:J1第6節横浜Fマリノス×ジュビロ磐田26分のマルティノスのゴール)一瞬見た時にはオフサイドではと思いました。どうしてもゴールした選手をマークしている選手を最終ラインとみてしまうのですが、その奥に一人残っているんですね。

こちらも(参考記事:J1第8節浦和レッズ×コンサドーレ札幌の34分の同点弾見極めた副審のジャッジ)副審のポジションが素晴らしい。見ているとサポーターの方々も"オフサイドだよ"と言われそうですが、奥に選手が残っており、オフサイドではありません。

次です。(参考記事:J1第7節ジュビロ磐田対サガン鳥栖アディッショナルタイムのムサエルのシュート時のジュビロ磐田選手はオフサイド?)5番の選手がオフサイドポジションにいますね。オフサイドではないと答えられた方は?」



石井:「そもそもでオフサイドポジションじゃないかなと思いました。」



上川「なるほど。オフサイドポジションであれば、どうですかね?シュートを打った瞬間であれば、5番の選手はGKに影響していない。ですが、シュートがGKの前に来るとき、5番の選手のポジションはどうでしょう。この試合ではゴールが認められました。シュートを打った瞬間は、問題ないと思います。しかし、その後でGKに近付いて、GKの視線を遮っている。目の前にいると視線を遮られ、GKのプレーを妨げる。非常に難しい判定ですが、これはオフサイドと考えます。」



―フラッグは上がったのでしょうか?



上川「上がらなかったですが、副審から情報は伝わっています。レフェリーが自分で、視線を遮っていないと判断しました。ですが、GKと5番の選手の近さを見極めないといけなかった。」



―シュートがGKの右側に入っていたら?



上川「であれば、オフサイドにはなりません。ボールが遠い所を飛んでいるので。

次ですが、このシーンは(J2第5節レノファ山口×カマタマーレ讃岐49分のゴールがオフサイドで取り消しとなったシーン)皆さんもオフサイドとされたようですね。レフェリーは非常に良いポジションで見ました。副審は横の位置から見ているので、深さがわかりません。オフサイドラインは見えますが、GKの視線を遮っているかはわかりません。副審はしっかりと情報を伝えて、良いポジションにいる主審が視線を遮っていると判断し、オフサイドとしました。レフェリーのポジションはシュートが打たれる時は、オフサイドのインパクトを見たり、ハンドリングが起きる可能性もあり、主審は縦の位置から見られる位置につくように指導しています。非常に良いポジションと良い協力だったと思います。

これは(J2第7節アビスパ福岡×FC町田ゼルビア戦)ひっかけ問題です。オフサイドの条件として、自分の陣地では起きない。このFWの選手より前には誰もいませんが、オフサイドにはなりません。

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次がPA内での事象です。(参考動画リンク:J2第6節水戸ホーリーホック×レノファ山口戦)記者の皆さんはノーファウルが約半数。これは試合ではPKが吹かれています。この後、二つ続く判定とも関連していくのですが、まず24番の動きは相手選手に対して何かチャレンジしようとしていますか?接触した瞬間だけを切り取ると、後ろからチャージしているように見えます。ですが、その後ろからチャージされているような絵を作ったのはどちらの選手でしょうか。攻撃側の選手ですよね。8番が(自らコースに足を入れて)接触する状況を作っている。なので、ファウルではありません。あとはシミュレーションとするか。基本的にシミュレーションの考え方は、まったくコンタクトがないか、自分からイニシエート、接触を起こした。このシーンも見ようによっては、自分から接触を起こしているようにも映る。ただ、後ろから押されるようなコンタクトは起きているので、シミュレーションとは考えません。もちろん、そういった行為を何回か繰り返している選手。わざと小さな接触を利用してアピールすることが続けば、それはシミュレーションと判断します。PA内の事象で、レフェリーのミスが多いのがこのエリア(追加副審の目の前)です。去年のPA内のコンタクトの事象をJ1だけで集めました。どういうエリアでミスが起きているか統計をとると、やはりこの副審サイドの奥深い所です。反則の種類ですが、トリッピングは見極めやすいのですが、ホールディングとハンドリングでミスがありました。なので、今年のシーズン前にも、そういったことを意識しながらプラクティカルトレーニング(参考記事:プロフェッショナルレフェリーのトレーニングとは?)を行いました。あるいは実際に映像を見る。あるいは何でそういうミスが起こるのかまで追求しました。この映像の右側のエリアはレフェリーが近付き辛いポジションなんです。左側は外にスペースがあって入って行けるのですが、右に入っていくと選手がたくさんいるし、蹴られたボールが跳ね返って、レフェリー側に来る可能性もある。選手が多く集まると壁になって見辛い部分もある。それを見極めるためには、副審の協力も必要ですし、仮に追加副審がいれば違う判定ができたかもしれません。」



―24番の手の動きはどのように見られたのでしょうか?



上川「攻撃側の選手の腕が出たので、それをブロックするようなかばい手のようなものだと考えます。(実際に記者と手を出して接触する)押すというよりは、かばう感じですよね。手は気になりますが、プッシングやホールディングには見えないと考えます。

次ですね。(J2第8節モンテディオ山形×東京ヴェルディ79分のコンタクト)我々も最初PKかなと思いました。ですが、守備側の選手がしっかりとボールに触れていたらどうでしょうか。実は触れているんです。ボールにさわれずにジャンプにいって触れることができずに相手にチャージしたように見えましたが、何回か映像を見ると、触れているんです。触れた後にコンタクトがある。もちろん、ボールに触れていても、相手を崩してからボールに触れたのであれば、ファウルとなります。PKとされた方は、ボールに触れているのが見えなかったということですよね?この判定も皆さんノーファウルが半分ですね。ちなみに主審はノーファウルにしています。」

次です(J1第6ガンバ大阪×サンフレッチェ広島の29分PA内でガンバ選手のチェックを受けて倒れる)。遠目の映像で見ると、大げさに倒れているように見えます。」



―自分でバランス崩したように見える。



浦和レッズ×コンサドーレ札幌戦の興梠選手へのファウルの適用など続きはこちらをクリック



また15の事象の残りと記者ブリーフィング後に拙者が別で取材した読者からコメントのあったFC東京×サガン鳥栖戦(参考記事:イバルボへの森重の不用意なチャージ)、ヴィッセル神戸×柏レイソル戦(参考記事:岩波への二枚目の警告はボールにいっていないではなく右足をフォーカス)、アルビレックス新潟×FC東京戦(参考記事:ホニのシミュレーションと大久保へのPKは?)、ベガルタ仙台×鹿島アントラーズ戦(参考記事:クリスランの曽ケ端のファウルは、当たったかどうかではなく、チャレンジの仕方)は後編にてアップしたい(ホットなトピックスですので、今週か来週までには更新します。今後も気になる判定があれば、コメント頂ければ取材に活かします)。


石井紘人のFootball Referee Journal」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。

【審判批評コラム:レフェリーブリーフィング前編②】浦和レッズ×札幌戦の興梠へのPKをサッカー競技規則解説。世界的にトリップに厳しい?
http://www.targma.jp/fbrj/2017/05/01/post6932/

【レフェリーブリーフィング】審判批判記事を読む前に「メディアの判定力とは?」
http://www.targma.jp/fbrj/2017/04/30/post6922/

J論 最新テーマ: ニュース に関するコラム

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石井紘人のFootball Referee Journalについて(1票)

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2019年11月26日 23:10

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