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【町田】コラム『強欲なる追撃者たち』

2016 06/06  08:32

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回はFC町田ゼルビアを中心としたWEBマガジン「町田日和」からコラムになります。




【蹴中(しゅうなか)コラム】第1回/強欲なる追撃者たち町田日和
2016年06月01日更新

週中(しゅうなか・ミッドウィーク)にあたる水曜日もしくは木曜日にワンテーマコラムをお届けする新企画【蹴中(しゅうなか)コラム】。第1回はレギュラーメンバーを脅かす追撃者たちをテーマにしたコラムです。


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▼前節・熊本戦でのインパクト・シーン

その瞬間、迷いはなかった。神戸での第15節・ロアッソ熊本戦。68分から左サイドハーフのポジションで途中出場していた戸島章は、熊本DF3人に囲まれながらも、迷わずドリブル突破を選択した。191cmの体躯が凄みを携えて強引に相手を引きはがす。ゴール前に供給しようとしたクロスボールは相手の決死のブロックに阻まれたが、戸島の執念が乗り移ったボールを井上裕大が頭でつなぎ、最後はエースがゴールという最高の結果を導き出した。

「前に行ったらイヤだと思うんですよ。今日は相手がイヤがることを意識していた」

今季のプレシーズンからサイドハーフでテストされてきた戸島が新境地開拓とも言えるドリブル突破を披露する。昨季から進境著しい背番号23が途中出場で結果を残すなど、いまのFC町田ゼルビアの"総合力"は、大きなうねりを生み出そうとしている。

「自分自身、壁にぶつかっていると感じている」。第14節・松本山雅FC戦後、そう吐露していたボランチの森村昂太は、今節・熊本戦で今季初めて先発から外れた。昨夏、町田に加入したあとは森村、リ・ハンジェのダブルボランチがチームの"心臓部"を形成しており、ついにこのポジションにもメスが入った。森村の代わりに先発出場した井上は、所狭しとピッチを奔走し、セカンドボールを回収。極め付けは前述のように鈴木孝司のチーム2点目にも絡んだ。

足をつって体の限界が近付いていた井上に代わってピッチに立った選手が、今季初出場かつJ2初出場となった松下純土。23日に期限付き移籍元である松本とのトレーニングマッチで存在感を発揮した男が、ここまでわずかリーグ戦一度のベンチ入りという境遇を乗り越えて、交代出場でピッチに立っている。同じボランチのポジションには主力の森村が控えているにもかかわらず、相馬直樹監督の選択肢は、運動量がウリの松下だった。

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▼聖域なき、ポジション争い

松本戦の出来が指揮官の心を突き動かしたのかーー。どうやら本人の解釈は違うようだ。

「(23日のトレーニングマッチ)山雅戦の手ごたえはそこまでなのかなと。今回メンバーに入れたのは、なんでかなと自分なりに考えると、オフ明けに走りのトレーニングがあって、そこでズバ抜けて1位を獲ったんです。いつも走りは得意だし、そこでしかほかの選手との差を付けられない。今週はそれを意識的にやったらダントツ1位だったんですよ」

選手の小さな変化も見逃さない指揮官によるチームマネジメント。"相馬ゼルビア"では、走力と走量をベースとしたハードワークが、試合に出るための大前提条件である。出番を得るための判断基準が明確だからこそ、選手たちに迷いはない。松下の頑張りが報われたのは、健全な競争原理が働いている証左でもある。

攻撃の軸と目されているレフティーの鈴木崇文ですら、第12節・カマタマーレ讃岐戦では重松健太郎に先発の座を譲り、出番がなかった。事実、最近の背番号17は精彩を欠いていたが、今節・熊本戦では「ワンタッチプレーが多いのでは」と指揮官から指摘された反省点を自分なりに咀嚼し、鈴木孝司の先制点を見事なクロスボールで導き出している。

期限付き移籍から復帰した右SB三鬼海、開幕戦から先発出場が続いていたCB畠中槙之輔も、いまではベンチから虎視眈々と先発復帰のチャンスをうかがっている。もはや相馬ゼルビアに"聖域"なしーー。それはもちろん、「ポジションを譲る気はない」と語るチーム主将にも当てはまる。

「僕たちは(神戸遠征に)来ていないメンバーを含めて戦っているし、試合に出ていないメンバーも腐らずやってくれている。いまはチームとして戦えている。そういう気持ちが強いのでこれを継続して1年間戦っていきたい」(リ・ハンジェ)

日替わりヒーローの出現や、健全なる競争原理は、勝てる集団であり続けるために必要不可欠な"刺激"でもある。「これからもどんどんとスタメンを入れ替えられるようにやっていければ、相乗効果でもっとチームは良くなると思う」とは戸島の弁。先発メンバーを脅かす"追撃者"たちは、どこまでも強欲である。

Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)
Photo by cFC町田ゼルビア/春木 睦子(熊本戦)、郡司 聡(松下純土)

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町田日和」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。


【マッチレビュー】J2第16節・徳島ヴォルティス戦/町田の真骨頂。ギリギリの攻防を制し、徳島を撃破
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【コラム】J2第16節・徳島ヴォルティス戦/リーグ最少失点タイ。徳島戦で顕在化した堅守の理由
http://www.targma.jp/machida/2016/06/05/post4637/

【★無料公開】J2第16節・町田×徳島/町田・相馬直樹監督、徳島・長島裕明監督、渡大生選手、内田裕斗選手、カルリーニョス選手(2,804文字)
http://www.targma.jp/machida/2016/06/04/post4632/

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