情熱の分析家・河治良幸の一言解説

　欧州と南米のクラブ頂上決戦だった前身のトヨタ杯から世界のクラブ王者を決める大会として2005年に正式スタートした大会ですが、日本開催は今年は7度目、来年で8度目となります。

　大会の世界展開がなかなかうまく進まないなという寂しい気持ちもありますが、日本のサッカーファンがFIFA公認の世界大会をまたしても生で触れられるというのは喜ばしいことですね。

　注目の欧州チャンピオンズリーグはベスト4が決まり、北中米カリブ海の代表を決めるCONCACAFチャンピオンズリーグもカナダのモントリオールとメキシコのクラブ・アメリカがファイナルを戦っています。アジアや南米はまだグループリーグの最中ですが、各大陸の戦いに対する注目度も上がってくると思います。

　日本は仮にAFCチャンピオンズリーグ（ACL）でJリーグ勢がアジア王者になれなかった場合も、開催国枠で出場は可能となります。過去には2011年に柏レイソル、2012年にはサンフレッチェ広島がその恩恵に預かり健闘を見せました。ただやはり、2008年のガンバ大阪から7年ぶりとなる「アジア王者としての参戦」を果たしてほしいものです。

　ACLはJリーグ勢の4クラブ中3クラブが開幕戦で敗れるなど苦しいスタートを切りましたが、コンディションの上昇に加え、グループリーグ前半戦の経験などから厳しく勝負する意識を強めたことが逆襲につながっていると思います。

　日本代表のハリルホジッチ監督も勝つための球際の強さ、ハードワーク、縦の意識といった部分は強く主張していますが、テクニックやコンビネーションをベースとしながらも、必要なところで厳しく勝負に行くことの重要性があらためて浮き彫りになっており、そうした意識変化が日本サッカーにも起きてきている一つの成果ではないでしょうか。

　もちろん決勝トーナメントになれば様相は全く変わってきます。今回は例年以上にグループリーグの前半戦で苦戦を強いられたがために、開幕時から気をはいていた柏レイソルの奮闘、ガンバ大阪と鹿島アントラーズの巻き返しがポジティブにクローズアップされていますが、過去の大会を見てもJリーグ勢の大きな鬼門になっているのはグループリーグではなく、ベスト16です。

　ガンバ大阪と鹿島アントラーズはまずグループリーグの最終戦にしっかり勝って、柏レイソルと共に突破を決めてほしいですが、そこからまた本当の戦いが始まるということ。気持ちを引き締めて臨んでいってほしいですね。ACLの出場権というのはJリーグで上位に入り、あるいは天皇杯で優勝して勝ち取った権利ではありますが、同時に日本中のクラブの代表でもあるわけです。

　SNSなどでも普段は自分のひいきクラブがあるサッカーファンがACLの出場クラブに期待や応援のメッセージを出し、結果が悪ければ悔しさを表すコメントを書いているのを目にすると、枚数の限られた権利を勝ち取って大会に出場しているというのはそういうことだと実感します。

　クラブW杯は開催国枠という“保険”があり、ACLのタイトルを逃せばJリーグ王者に出場権が回ってくるわけですが、日本で3年ぶりに開催される世界大会にアジア王者として臨めるよう、勝ち残ったクラブの躍進を願っています。