【アビスパ福岡】17歳の逸材「邦本宜裕」勝負はここから
2015 03/01 17:08
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今回はアビスパ福岡を中心としたWEBマガジン「football fukuoka」から邦本宜裕選手に関する記事になります。
未来に向かって走れ!17歳の挑戦
2015年02月23日更新
(C)football fukuoka
「好青年」。これが私が初めて彼と話した時の率直な印象だ。まだ17歳、しかも声をかけたのは、チームが始動してから3日目ということもあって緊張感丸出しだったが、それでも、質問に対して自分の言葉で答えられることに驚いた。もし、自分が17歳だったら、未知の世界での生活が始まったばかりの時に、誰とも分からないおっさんに声をかけられたら、もっと違う対応をしていたに違いない。
技術の高さは群を抜く。単純な比較ならチームの中でも上から数えた方が早いだろう。特にボールタッチの柔らかさは抜群だ。足先で軽くタッチするだけでボールの位置や、転がる方向を変えて自分のものにする。その技術の高さがあるからだろう、常に上半身が立っており広い視野を確保している。本人が「ドリブルが得意」と言っていることから、若さに任せてゴリゴリ行くタイプだと思っていたが、周りも活かし、自分も活きるプレースタイルのようだ。
スペースへ入ってくる感覚も独特。ほとんどの場合、全速力で走り込んでくることはない。ゆったりと周りを見渡しながら、ゆったりとポジションを取る。そして、緩急をつけながら、ある時はスルスルと、ある時は一瞬のスピードでスペースに入り込む。17歳と知らなければ、ベテラン選手と勘違いしかねないような動き方だ。
宮崎キャンプでは、千葉戦、広島戦でレギュラー組のサブメンバーとして出場。短い時間ではあったが、レベルの高い相手とのプレーも経験。千葉戦では酒井宣福からのアシストを受けてゴールも記録。「上手く当たり損ねてくれました(笑)」とは本人の言葉だが、酒井のアーリークロスに対して、これしかないというタイミングで裏に飛び出して、反転しながらのボレーシュートは、決して簡単な形ではなかった。
それでも、やはりプロの世界は厳しい。技術力に定評はあっても、トレーニングマッチになると、思うようなプレーを出せないことが多い。
「ゴールに向かうことが出来ていないのと、簡単にボールを取られたりしているのが課題です。そこを練習で改善していきたいと思います。やはりユースでやっていた時と比べると、プロは寄せの速さが違うので、そこが少し難しいところです。でも、感覚が分かれば、しっかりやれるのではないかと思います」
自分の課題については、しっかりと把握しているようだ。また、周りに対する要求についても、もっと強く主張出来るようになることも必要だ。
逸材であることは間違いない。ただ、プロデビューを飾るには、まだまだ覚えなければいけなすことは多い。また17歳という年齢であれば当然だが、常に同じパフォーマンスを発揮できる安定感も、まだ足りない。そして、厳しい言い方をすれば、逸材と呼ばれる能力を持っていながら、プロの世界で、その能力を発揮できずに終わった選手は数え切れないほどいる。邦本にとっての勝負はここから。さらに技術、サッカー観を磨くことは当然として、人間として様々なものを身につけなければプロの世界では生き残っていけない。それにはやはり経験が必要だ。
17歳という年齢に甘えることなく、しかし、今の素直さを失うことなく、サッカーが好きという気持ちを大切にしてプロの道を歩いて行って欲しいと思う。また、クラブには、時に温かく、時に厳しく、育てていってほしいと思う。そして、1日も早くレベルファイブスタジアムで躍動する姿を見せてほしい。
【中倉一志=取材・文・写真】
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