【FC東京】日常の重要性を説くイタリアの精神「本物のメンタリティをつくり上げていく」(マッシモ フィッカデンティ監督)
2015 02/05 22:48
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今回はFC東京を追いかける後藤勝さんによる「トーキョーワッショイ!プレミアム」からフィッカデンティ監督に関するコラムになります。
【始動コラム第5弾】日常の重要性を説くイタリアの精神、フィッカとカーノ「本物のメンタリティをつくり上げていく」(マッシモ フィッカデンティ監督)「日々のトレーニングが大事だと思っています」(カニーニ)(2015/01/27)(トーキョーワッショイ!プレミアム)
(C)後藤勝
癖の強い監督が独特、またはそのカテゴリーでは異色の戦術を浸透させようと思えば、ある程度の適応期間が必要になる。2014年は、FC東京イレヴンが、マッシモ フィッカデンティ監督の掲げるカルチョを理解し、自分たちのものにしていく過程だったとすれば、完全ではないにしろ、それは達成されつつあると考えていいだろう。少なくとも一年前のように、受講ノートに真っ白なページをたくさん残したままで開幕を迎えたような状況とはわけがちがう。
そして新しいチームをつくっていく、あるいは一定のやり方に習熟したチームに新しい選手がなじんでいくには、時間がかかる。いくら有能な選手であっても、やってきてすぐに活躍できるというわけにはいかない。
2015年のFC東京は一年ぶんの経験値を積んだ状態でスタートした。こういうチームでは、新しい選手の頭数よりも、理解力の高い選手、集団に適合できる選手の多さのほうが、実力を測る指標になる。
始動時点で唯一の外国籍選手であったカニーニも、適合しつつあり、加入当初よりも地力を表現していけそうなそのひとりだ。
「まずは加入した当初と異なり、いまは選手のことをよく知っているので、それはポジティヴな側面だと考えられます。そしてチームはゼロから始まっている」
丸山祐市の湘南ベルマーレからの復帰と、奈良竜樹のコンサドーレ札幌からの期限付き移籍加入により、ライバルの人数は増えた。しかしカニーニは意に介していない。
「競争は常にあることなので、競合する人数の多い少ないの問題ではないと思っています。あとは監督の決断に従うだけです」
そして、選手が、チームが力を伸ばしていくために必要なことを自覚している。マッシモ フィッカデンティ監督のサッカーを理解している点が活きてくるのではないか、と訊ねると、カニーニは次のように言った。
「もちろん、過去に監督と同じチームで時間をすごしたというキャリアはありますけれども、重要なのは一週間、一週間、しっかり試合に備えて戦っていくことですから、日々のトレーニングが大事だと思っています」
うっかりしていると聞き逃してしまいそうに当たり前のことだが、同じことはマッシモ フィッカデンティ監督も言っている。
2ステージ制になり、リーグ戦の戦い方が変わってくるだろう、という話題になったときのことだ。
「周りのチームの話も耳に入ってきますが、まずスタートダッシュに成功して優勝しようと言っているチームがたくさんあると聞きます。
ただ、それを実際になし遂げるためにはふだんの練習から一日いちにちを大切に、本物のメンタリティをつくり上げていく、去年からやってきたことを継続してやっていく、去年いちばんよかった時期をどれだけ延ばしていけるのかをテーマにしっかりとやっていくことが、ほんとうの結果につながってくると思います」
強くなる魔法はないが、能力を上限まで伸ばす方法論はある。
毎日練習をすることだ。
どういうことかというと、人間がある行動を習慣化するには、数カ月から数年の蓄積が必要になる。いくら質の高いトレーニングをしていてもそれが三日坊主では意味がなく、毎日、服を着替えたり歯磨きをするように、当たり前の行動として習慣化していかなくては、力は身につかない。
特にメンタルについては、確実にそうだ。
よく例に挙げられる鹿島アントラーズのような気風をクラブ内に充満させていくには、いっときだけがんばるのではなく、毎日、具体的に考え、からだを動かしていくしかない。
翌日の筆記試験のための一夜漬け勉強なら話は別だが、地力をつけることと、その力を公式戦で最大限に発揮するメンタルをつくり上げるには、毎日意図的に自らを鍛え、それを意識せずに済むようになるまでつづけていかないといけない。
イタリアから来たふたりは、それをよくわかっている。
オフには、選手たちは、昨年なぜある時期に結果を残すことができ、それが一年を通してつづけることができなかったかを考えてくるよう、宿題が課されていた。その答えを持ち寄り、もちろんスタッフの分析も加え、今シーズンの東京は、日々の練習によって少しずつヴァージョンアップを図っていく。
マッシモ フィッカデンティ監督は言う。
「分析をふまえたうえで、グラウンドで示していきたい。去年はぎりぎりのところで最後、もう少し足りない部分があったということはわかっています。
後半戦に14試合連続負けなしと非常によい時期もあり、勝点を30近く(7勝7分けで勝点28)獲得しました。どれだけあの時期を延ばしていけるかということをテーマにやっていきたいと思います。
新しい選手も入っていて、特に前線のところで、またちがったかたちで自分たちのサッカーというものを展開できる可能性が増してきましたから、準備の段階でしっかりとつくり上げていきたいと思います」
昨年の33失点はガンバ大阪や浦和レッズにひけをとらない数字だが、47得点はガンバより12、浦和より5少ない。得点力の向上は不可欠だ。前田遼一、林容平をいかになじませていくかが、攻撃力アップの鍵を握る。
マッシモ フィッカデンティ監督も、その点は十分認識している。
「去年の話をすれば、やはりスタートの時点で新しいフォーメーションを採用していたり、選手たちの顔ぶれも変わったということで、非常に苦しい時期はあったのですけれども、中断期間明けからほんとうにいいかたちで、サッカーを展開することができたというふうに思っています。
ことしに関して言えば、新しい選手たちを、いかに早くチームに適応させていくかということが大事になってきますけれども、大部分は去年からよく知っているメンバーですし、(2015年に)入ってきた選手たちも、何人かはチームに「戻ってきてくれた」選手ですし、前田選手にいたっては経験のある選手ですから、チームに適応することも難しくないと思っています。
去年と比べるとそういった点であきらかに優位に立っている、という印象があります。
(前田には)いつも彼がやってきたことをやってくれればいい。彼だけが責任を負うのではなく、全員が責任を負っていかなければいけないのですけれども、大事になってくるのは、彼がいままでやってきたことを、このチームでやってくれることです。
ジュビロ磐田に関してはこの二年間苦しい時期をすごしているかもしれませんけれども、やはり前田選手のけがもこの(過去二シーズンのチームの)不調につながっていたと思っていますから、彼がけがを治してしっかり戻ってきてくれたということで、そういう意味ではほんとうに大きな補強だったと思っています」
日々のトレーニングを充実させて強固な土台をつくり上げること。
そして、その大地に選手をなじませていくこと。
しごく当然のことであっても、これを一年間欠かさずにやり通さなければ、中位から脱却することはできない。
何か特別なことではなく、当たり前のように集中した練習をしているかどうか。
日常の質が、優勝できるチームへの変身を担保する。
後藤勝さんの「トーキョーワッショイ!プレミアム」ではこのほかにも
・【新体制発表ピックアップ】奈良竜樹、キャプテンモリゲへの挑戦状。33番の感想を問われ「2倍の力で、2倍のプレーをしたいと思います」。会見とその二日前に語ったこと(2015/02/05)
・【新体制発表】「FC東京2015シーズン新体制発表記者会見」まとめ「何度か対戦してサポーターが嫌だという印象が強く残っている」(榎本達也)「FC東京のサポーターのみなさんの迫力はすごいなと外から観て感じていました」(前田遼一)(2015/02/05)
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・【始動コラム第6弾】日本一を経験した頼もしい最年長選手が示唆するもの、榎本達也「いい環境をベストのために使うことで、レベルが上がる」(2015/01/29)
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