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選手権3回戦には”魔物”がいる。重なる偶然、奇跡の敗北、青森山田は悪夢のジンクスを破れるか!?

彼が注目したのは、雪国・青森で毎年強健なチームを作る青森山田である。そんな彼らが恐れる"魔の三回戦"とは......。

93回目を迎える伝統行事、高校サッカー選手権大会が12月30日より首都圏で開催される。今週の『J論』では、高校サッカーを取材してきた6人の筆者が、それぞれ少し視線と論点を変えながら「高校サッカーの風景」を描いていく。三番手で登場する安藤隆人は根っからの高校サッカー好き。そんな彼が注目したのは、雪国・青森で毎年強健なチームを作る青森山田である。そんな彼らが恐れる”魔の三回戦”とは……。

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夏の高校総体では4強入り。今年こそ”魔物退治”を果たせるか? (C)Kawabata Akihiko

▼強豪の行く先に鬼門あり
 MF柴崎岳(鹿島)、GK櫛引政敏(清水)、DF橋本和(柏)など、多くのJリーガーを輩出し、ユース年代最高峰の高円宮杯プレミアリーグに立ち上げ初年度から参戦し続けている、東北の名門・青森山田。今年もプレミアリーグに残留を決め、夏の高校総体ではベスト4入り。冬の選手権においても当然のように出場(18年連続!)する。毎年のように優勝候補に名が挙がるそんなチームに、実は”鬼門”がある。

“魔の3回戦”

 実を言うと、青森山田は昨年まで4年連続で3回戦敗退(ベスト16)を喫している。過去20回の出場を紐解いても、実に9回も3回戦の壁に阻まれてきた。柴崎と櫛引が3年生だった代もそうだった。3回戦で優勝した滝川第二に敗れ、DF室屋成(明治大、U-21日本代表)が3年のときも、3回戦で4強入りした星稜に敗れた。昨年も「4度目の正直」を狙ったが、初出場の履正社に1-1からのPK戦の末、涙を飲んでいる。

▼魔物の魔力に阻まれて
 そもそも、選手権における3回戦は、非常に難しいという一面はある。日程上、1回戦からの登場だと、31日に初戦を戦い、中1日で2回戦、そしてその翌日に”中0日”で3回戦とコンディション的に難しい。さらに昨年の履正社のように新鋭校やダークホース的な存在のチームが、1、2回戦を勝って勢いに乗っているときもある。優勝候補だからこそ、名門だからこそ、チャレンジャーとこのタイミングで相見える難しさもある。

 だが、青森山田の場合、鬼門としか言いようが無いほど、3回戦の壁は多すぎる。悪夢の発端は2003年の第82回大会から。市立船橋と対戦し、残り3分で決勝ゴールを浴び、0-1で敗れたときから始まった。翌83回大会でも、3回戦で再び市船と対戦。またしても試合終了間際に決勝ゴールを浴びて0-1で敗れた。そして、さらに翌84回大会は、まさに”魔物”が棲んでいた。

 3回戦の多々良学園(現・高川学園)戦、2-1のリードで迎えた後半、青森山田のループシュートがGKの頭上を破る。バウンドしたボールが、ゆっくりと無人のゴールに向かった次の瞬間、風速23mの風がゴール裏から強烈にボールに吹き付けた。ボールは一瞬止まり、ゴールラインを割るのを嫌がるかのように、ゴール中央からゴールポストに向けて弾み、そのままポストに当たった。

 この瞬間を筆者も見ていたが、それはそれは『ありえない』軌道を描いてポストに当たり、勝利を決定付けるゴールになるはずのループシュートは、幻に終わった。しかし、まだリードしている。アディショナルタイムの3分が表示された時、黒田剛監督の脳裏に嫌な予感がよぎった。

「ああ、なんかこの展開、一昨年も去年も見たなぁ…。でも、まさかなぁ…」

 次の瞬間、後半シュート0本だった多々良学園が、ロングボール一発から後半のファーストシュートで同点ゴールを挙げたのだ。そしてその直後、なんと勝ち越し弾を浴び、ものの2分で試合はひっくり返ってしまった。

「あれは本当に参った。魔物がいるとしか思えなかった」(黒田監督)

 その後も2年連続して3回戦で敗退。つまり、5年連続で3回戦での敗退となった。

▼魔物退治へ前進あるのみ
 だが、87回大会こそ”ハンパない”大迫勇也を擁した鹿児島城西に初戦で敗れたが、88回大会はMF椎名伸志(松本)と2年生の柴崎、櫛引を擁し、準優勝を果たした。

「松澤隆司監督(元鹿児島実業監督)から、『一度壁を突き破ったら、一気に行くよ』と言われていた。それが現実になった」と黒田監督が語ったように、88回大会は3回戦で高知を2-1で下し、そこから一気に波に乗った。

 とはいえ、前述したように、こうして準優勝を飾った翌年から、再び3回戦の壁にはまってしまっている。だが、もう前回のような心境ではない。黒田監督はこう言い切る。

「気にしていないと言ったらウソになるけど、88回のときのように、必ずどこから一気に上に行ける時が来る。というより、それを願うだけ。それにね、ウチは選手権でベスト8が一度もないんだ。壁を破れば、一気に行ける自信がある」

 黒田監督が就任してから18年連続で選手権に出場している青森山田だが、そのうちベスト16が10回、ベスト4が1回、準優勝が1回。初戦敗退は76、80、87回大会のわずかに3回だ。それだけ確実に全国で勝ち星を挙げているとも言える。なかなか残せる戦績ではない。だからこそ、黒田監督も「その時」が来ることを信じられている。

 今大会、順当に行けば、3回戦の相手は履正社となる。実現すれば、2年連続同一カード。これほど面白いカードはないかもしれない。

「もうね、3回戦を勝つ方法なんて知らん。あったら教えてくれ。毎年、『今年こそは』でやっている。今年もだよ、『今年こそ』ってね(笑)」

 3回戦で履正社とのリベンジマッチが実現するのか。そして、『今年こそ』3回戦の魔物を退治できるのか。1月3日、駒場スタジアムの第2試合が今から楽しみだ。

 最後に補足しておくと、今年の駒場スタジアムの3回戦第2試合の実況は、日テレのラルフ鈴木アナウンサーが担当すると言う。実は前回の履正社戦もラルフ氏が実況を担当である。早くも魔物の存在を感じさせる偶然……。

「おいおい、お願いだから変なジンクス作るなよ」

 プレミアリーグのとある試合でラルフ氏と顔を合わせた黒田監督は、こう強烈なジャブを打ち込んだ。果たして新たなジンクスは生まれてしまうのか。それとも、宿願の魔物退治を果たせるか。注目の一戦となる。

安藤 隆人(あんどう・たかひと)

巷では『ユース教授』と呼ばれるサッカージャーナリスト。元銀行員という肩書を微塵も感じさせない自由な取材スタイルで日本列島、世界各国を所狭しと動き回る。地元・FC岐阜に関してはチームがオギャーと産声を挙げたころから関わり、J2昇格からJ’sGOAL岐阜担当として、今も変わらぬ愛を注いでいる。週刊少年ジャンプでは『蹴ジャン!SHOOT JUMP!』を昨年5月から連載し、選手4コマ、岡崎慎司物語ではキャラクターとして登場する。著書も多数。代表作は1万部を突破した『走り続ける才能たち~彼らと僕のサッカー人生』(実業之日本社)。