川崎FとC大阪、そして長崎。待ち続けた夢は次への始まり【2017Jリーグアウォーズ】

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「クラブ、監督、選手、そしてみなさんでお互いを称え合い、Jリーグの一年間の締めくくりにふさわしい祝福の祭典を共に作り上げましょう」。

聞き慣れたサッカーの声、西岡明彦さんの声が横浜アリーナから聞こえる。最初に登場したのは中村憲剛。その胸にはしっかりと、ふろん太が抱かれている。10,000人の歓声がひと際大きくなった。12月5日、2017Jリーグアウォーズは、川崎フロンターレの入場から始まった。

▼憲剛に......11年待ち続けた栄冠

大学生の2人組は、この時を待っていた。「2006年に2位になった時にすぐ取れると思ったんですけどね。あの時は小学生だったんですけど、今大学生ですからね。ついに、ついにですよ」と積み重ねてきた時間の重さを語る。壇上に並んだ川崎Fの選手たちを代表し、キャプテンの小林悠に重いシャーレが手渡される。「これを見に来たんですよ。風呂おけもフロンターレらしいと言えば、らしいんですけどね」。11年間待ち続け、成人となっていた2人組の喜びの声は止まらなかった。

そして「憲剛のために」と全サポーターを代表した想いを語る。その中村にトロフィーが渡され、持っていたふろん太は谷口彰悟の手の上に移っていた。中村は会見で「昨年MVPをもらって、あとはチームのタイトルだけだったので、やっと達成できて本当にうれしい」と優しい表情で語っていた。「37歳という意味を示していかないといけない」と言いながらも、「年齢は関係ない」と次なる戦いへ目を向けていた。

川崎Fにはもうひとり、中村と共にチームを支えてきた人物がいる。インタビュアーの平畠啓史さんは、サポーターの気持ちを理解していた。井川祐輔の「等々力のピッチで憲剛さんと抱き合った時は男泣きをしてしまって。今ちゃんと実感がわいています」の言葉に、サックスブルーの拍手が起きた。

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そして意外なところから、「お礼を言われても困ると思うんですけども、ありがとうございました」という言葉が出る。ブラウブリッツ秋田・杉山弘一監督である。「J3最終戦、鳥取での試合の前日に川崎Fの逆転優勝を見ることができました。どんなモチベーション映像よりもリアルに逆転優勝をイメージすることができました」J3を制した舞台裏に隠されていた事実を語った。

川崎FのJ1初制覇は、すべてのJの人々に勇気と感動を与えていた。

▼もうひとつの初タイトル

初タイトルはひとつだけではない。J1を制した川崎Fよりも、少し早くセレッソ大阪が初タイトルを獲得。J1に戻ったばかりの1年目で、彼らはルヴァンカップチャンピオンとなりなった。柿谷曜一朗は「チーム全員でつかんだタイトルなんで本当にうれしかったです」とキャプテンらしく語る。その想いは、酒本憲幸のユニフォームを着て戦ったことにも表れていた。平畠さんは酒本に想いは伝わったかを聞く。すると柿谷はさらっと「あんまりでしたね。僕は強い気持ちだったんですけど」と笑いの本場・大阪らしくひとネタを披露した。

大阪にも応援に行く、関東勢のC大阪サポーターの女性は「決勝は泣けたよね」と現地でトロフィーを掲げる瞬間を見ていた。「今でもびっくり、予想外すぎて。(杉本)健勇の覚醒がこの順位まで上げてくれた」と、ACLでのアジアツアーの計画をしていた。その杉本は、「曜一朗くんが最初からPK譲ってくれれば(得点王は)取れたかもしれないですね」とこちらも笑いを取りに行く。だが得点王の小林に「ずっと争ってきたので、おめでとうございますと言いたいです」と、ライバルへの称賛を忘れなかった。

サポーターの女性は「胸に星が着くのがうれしい。次は天皇杯。ゼロックスに出てまた川崎Fと戦いたい」と、初タイトルからすでにタイトルコレクターへの道を夢見ていた。

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▼地獄から天国へ、そして夢へ

もうひとつ忘れてはいけないチームがある。「チームが存続してくれただけでもありがたいのに、ご褒美を頂いた気分ですよね」。そうV・ファーレン長崎の女性サポーターは語った。経営危機に陥った長崎を、ジャパネットたかたの髙田明社長が救った。「アウェーにも来てくださって、少ないサポーターに声をかけてくださいます」と新社長との交流を話す。「キャプテンのムラさん(村上佑介)がチームをまとめてくれて、日替わりでヒーローが出てきたみんなの勝利」と、サポーターはJ1昇格の喜びを隠せない。「まずはJ1残留が目標です。(サガン)鳥栖さんのように、J1の常連になりたい」。地獄から天国へと駆け上った長崎の夢は続いていた。

▼暖かい2017年

MVPは大学生の川崎Fサポーターの予想通り、小林悠だった。家族への感謝を伝えた後に、突然現れた家族に「うそ!?」という素の表情で小林は驚いていた。猛ダッシュで走った息子を抱きかかえた小林は、一家そろって横浜アリーナを暖かい雰囲気に包んでいた。

「もう落ちたくない」と言った湘南ベルマーレサポーター、「戻ってこれて安心した」名古屋グランパスサポーターもいる。ACLを戦うためここに選手はいないものの浦和レッズのサポーターも来場していた。悔しいこともあった。だが、誰もがこの1年を楽しんでいた。

2017年、Jリーグは新たな顔と、馴染みの顔がひとつになり、暖かい1年を締めくくった。

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