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3本目の柱はR。新たなパートナー、楽天がJリーグオンラインストアを変える【Jリーグ x 楽天 共同記者会見レポート】

4月24日、JFAハウスにて『Jリーグ x 楽天 共同記者会見』が行われ、Jリーグは楽天株式会社と『JリーグオフィシャルECプラットフォームパートナー』契約の締結を発表した。記者会見には、Jリーグ村井満チェアマンと楽天株式会社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏が出席。楽天は「Jリーグオンラインストア」7月中旬のリニューアル、その後は運営支援を行うこととなった。

 

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▼Jリーグオンラインストア Powered by 楽天


 村井満チェアマンは3本の柱を求めていた。リーグを支え全54クラブをスポンサードする、明治安田生命。週に全27試合をインターネットで中継する、DAZN。村井チェアマンは「Jリーグ、クラブをサポートする柱」として2社の名前を挙げる。そして「最後のピース」と宣言した3本目の柱をJFAハウスに招く。村井チェアマンが壇上横の椅子に座り見つめた先には、楽天株式会社代表取締役会長兼社長、三木谷浩史氏がいた。

 4月24日、Jリーグ x 楽天 共同記者会見で、『JリーグオフィシャルECプラットフォームパートナー』として楽天と契約締結が発表された。

「J1、J2、J3、全54チームの商品を売るプラットフォームを」と三木谷氏は語る。そのプラットフォームとは、現在Jリーグが運営している『Jリーグオンラインストア』。楽天の手により、公式オンラインストアが7月中旬のリニューアルを予定しているという。

▼もう一つのクラブオフィシャルサイト

 ごひいきのお店はどう変わってしまうのだろうか。なじみのお客さんにどう映るのだろうか。

 スクリーンに映し出された試作段階のトップページの画像には、マグカップやスマートフォンカバー、ユニフォームといったカテゴリー別の表示がある。またJ1、J2、J3の文字をクリックすると、並んでいる各リーグ所属のクラブエンブレムが切り替わると矢澤俊介(楽天株式会社ECカンパニーCRO)氏は説明する。クラブ単位での一覧も可能、もちろんスマートフォンにも対応。さまざまな端末からカテゴリーとブランド(クラブ)で選ぶ、いわゆるオンラインストアの王道とも言えるものだった。

 だが、各クラブのページは一味違っていた。54クラブすべてに用意されたページには、グッズ販売のほかにニュースや試合結果なども表示されている。各クラブ自ら情報更新ができる、もう一つのクラブオフィシャルサイトのような側面も持たせていた。「よりサポーターにとって使いやすいオンラインストア」(矢澤氏)を楽天は計画していた。

 そして、楽天と言えばポイント。楽天が手掛ける『Jリーグオンラインストア』は、楽天スーパーポイントが貯まり、そして使える。もちろん、楽天IDを利用した決済方法も可能となっている。だが、必ずしも楽天に入会しなくても購入可能なのがこのサイトの特徴の一つ。出井宏明(株式会社Jリーグデジタル専務執行役員)氏によれば「利用者が一番使いやすいものを選ぶ」ことを目的としており、将来的にSNSなど「日常よく使うIDをそのまま使えるようにしたい」と、Jリーグのデジタル戦略の一つ、オープンID化を視野に入れている。

 Jリーグ側の出井氏の「よりもっと身近に、初めて観戦に来る方も気軽に」と、「サッカーには興味はある、だけれどもJリーグのグッズを買うまでには至っていないみなさまに」と楽天側の矢澤氏が語る形が、情報配信もできるJクラブ統一のECプラットフォームだった。

 なお、このサイトでのチケットの販売については予定がない。「今後認めてもらえるように頑張りたい」と三木谷氏は笑いながら、冗談とも本気とも受け取れる言葉を発していた。

▼54クラブがそろう真の姿へ

 情報配信もできるサイトを手に入れたお店はどう変わるのか。

 もうクラブは、代金が振り込まれているかを確認し、丁寧な梱包と伝票を用意しながら、商品を受け渡すトラックがやってくる時間に焦る日々から解放される。楽天は「Jリーグオンラインストア」を準備するだけはなく、委託販売にも携わる。楽天が代金のやり取りをし、その後千葉県の楽天スーパーロジから全国のご家庭に商品が向かう。また、専用のカスタマーサポートセンターも用意され、販売から発送、サポートのすべてを担当している。

 クラブは、もう新商品発売のたびにやっていたクッズを撮影し、寸法などのスペックを調べる必要もない、商品を用意すればいい。グッズの撮影、ユニフォームなどの採寸も楽天が代行する。また、クラブのオフィシャルサイトで独自にクッズ販売は並行して行われる。結果として2店舗をオフィシャルで構え、片方は楽天任せも可能となった。各クラブの業務工数の削減で全クラブがそろっていない現状を打破し、真の意味での『Jリーグオンラインストア』を目指す。

 そして何よりも、クラブの味方に楽天グループが付く。「顧客基盤そのものが圧倒的に日本有数」(村井チェアマン)である楽天は「1億人を超える会員」(三木谷氏)を誇る。「圧倒的な集客」(矢澤氏)で新たな顧客の開拓は、「楽天グループの存在意義を示すことができる」と三木谷氏と自信をうかがわせていた。

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▼素直な気持ちの2度目の握手

「今回のサービスはすべてのクラブに等距離で、どのクラブに便宜を図るものではないと明確にしております。全クラブに対してメリットが出てくる。これは三木谷さんにも十分理解をいただいていると思います」。村井チェアマンは楽天=ヴィッセル神戸という、避けては通れない部分にも触れた。J優勝クラブの年間マーチャンダイジング売上規模は、プロ野球日本一になった球団に比べると1/16。大差を付けられているマーケット拡大に向け、村井チェアマンはJクラブのオーナーではなく、大企業の社長として交渉を重ねた。

 三木谷氏は、Jクラブのオーナーではなく、大企業の社長の立場でビジネスとして動いた。そして、ヴィッセル神戸に加え、プロ野球に楽天ゴールデンイーグルスを持ち、テニスの楽天シャパンオープンも開催。バルセロナの胸にRのロゴがプリントされる日を待っている三木谷氏は「異常にスポーツが好き」と自己分析をしている。「昨日、カリフォルニア経由でバルセロナから帰ってきて、朝クラシコを見て寝不足」とこぼした笑みは、生で見たかった、でも仕事だから、というようなスポーツファンの表情を見せていた。

「手を携えてJリーグがクラブをしっかり支える体制を」と村井チェアマンの手と、「Jリーグを世界に誇れるアジアNo.1のリーグにしていただきたい」と支持する三木谷氏の手が握手をする。Jリーグは、スポンサー・タイトルパートナー(明治安田生命)、中継(DAZN)、そしてマーチャンダイジング(楽天)の3つの柱に支えられることになった。メディアの写真用に交わした握手の後、二人はまた笑顔で握手を交わし会場を後にした。