J論 by タグマ!

『競争』と『変革』の未来をおさらい【J開幕特集・改革元年前夜/2017Jリーグキックオフカンファレンス・レポート】

JとD、共に高みへ

2月13日、2017Jリーグキックオフカンファレンスが開催された。1ステージ制、DAZN参入に注目が集まる中、忘れてはならないさまざまな変更がある。2017年は何が変わるのか。『変革』と『競争』の2017シーズンをJリーグが語る。

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▼見慣れぬ勝負服と鋭い眼光

 見慣れぬ青と赤の勝負服には、見慣れた背番号13。大久保嘉人は移籍という自身の『変革』を表す。対する鈴木優磨は、鋭い眼差しで開幕戦の相手をにらみつけ『競争』を表している。ステージ中央で『変革』と『競争』が握手をする。Jリーグキックオフカンファレンスは、二つのキーワードが交わった。

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▼1ステージ制、U-21、外国籍枠。『競争』の『変革』

 2017年は何が変わるのか。村井満チェアマンを始めとするJの関係者が壇上で「おさらい」をする。

「YBCルヴァンカップ、天皇杯、代表戦がある1年を通して勝ち点を一番積み重ねたチームがチャンピオン」(原博美副理事長)とあらためて王者を定義した。J1は1ステージ制へ回帰。さまざまな大会に影響されながら勝ち抜くトータルの力を強調した。

 リーグ戦の合間にあるルヴァンカップは、代表に優先権のあるインターナショナルマッチウィークを基本的に避けたスケジュールとなった。また、21歳以下選手を最低1名先発の義務がある。代表選手は日程上の欠場はなく、若手は確実に1人が出場できる。どちらにも該当しない選手たちの生存競争は激化の方向に向かう。

 外国籍枠も緩和された。現在、柏レイソルにはブラジル国籍選手が4名いる。外国籍3枠+アジア枠などの特別な2枠が、シンプルにすべての外国籍選手の登録が5枠に改正された。ただし、出場は従来の外国籍枠3人+アジア枠1人。柏では、出場3枠をブラジリアンの4人で争う新たな戦いが始まっている。

 また、提携国は外国籍枠に含まれない。この日来場した、チャン・ワタナカ(カンボジア/藤枝MYFC)、シティチョーク・パソ(タイ/鹿児島ユナイテッドFC)は登録、出場ともに制限がない。彼らは日本国籍と同じ、注釈の付かない11人に仲間入りをした。

 Jリーグは、村井チェアマンが持つ「アジアで勝てない状況が続くと、Jリーグがガラパゴスになってしまう」という危機感を、「日常のトレーニングレベルから激しい戦い」(原副理事長)で打開する策を講じた。2017年、サッカーをプレーする者たちに『変革』を与える。さまざまなレギュレーションの変更は、その奥にある『競争』を作り出すものだった。

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▼JとD、共に高みへ

 サッカーを見る者はルール改訂に加え、見る方法も『変革』する。テレビからネットに変わる。それは関係者もサポーターと同じ条件。ビジネスから離れた個人としても気になる存在のようだ。J3クラブのブースと並んだDAZNブースに人々が集まっていた。場内では、中西大介常務理事とDAZNのジェームズ・ラシュトンCEOがいるステージは暗転し、森重真人がクールに決める姿が流れた。

動画:テレビCM「FOR YOU ~J.League を、共に高みへ。~」フルVer.

 中西常務理事はCMのクオリティーを絶賛し、ラシュトンCEOは「私は作っていませんよ」と冗談を交える。50代の日本人常務理事は30代の英国人CEOを「ジェームズ」とフランクにファーストネームで呼び、壁面にあるDAZNのロゴはJリーグのロゴと同じ大きさで並ぶ。「共に高みへ。」というサポーターへのメッセージは、JとDの関係性も表していた。

 ラシュトンCEOは「Jリーグはヨーロッパとは異なり、開幕からすべてのチームがチャンピオンを目指している」と話す。全チームにチャンスがある混戦模様は、データに基づいたアウェイチームの勝率の高さと分析し「エキサイティング」と評価した。このDAZNの細かい分析は、サッカーファンだけではなく、すべての日本人を対象にしている。日本人は新しい技術を好みスポーツに情熱を持っていると考え、彼らの日本進出を決断させた。

 ここにも『競争』があった。「Jリーグのファンの人たちに、NBAやNFLにも目を向けてもらいたい」とビジネスパーソンであるラシュトンCEOが本音を漏らす。DAZNブースのスタッフも、2月6日にあったNFLのスーパーボウルに反響があったと具体的な例を話す。DAZNはサッカー専門ではなく、スポーツ全般を扱う。Jリーグは、ブンデスリーガやセリエAといった同業者に加え、他のスポーツとの『競争』をスマホの画面を通してすでに行っている。DAZNは広い世界で戦う場も与えていた。

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▼2.25、最も大切な『競争』が始まる

 2017年、Jリーグは変わる。さまざまな『変革』に対応した者が王者となる。

 J1の優勝賞金は上がり、大久保の「選手にどれだけ入ってくるか分からないですけど」の言葉に、「選手にいっぱい入ることを望んでいます」と鈴木が被せ、全タイトル奪取に意欲を燃やす。名古屋グランパスのブースには、グランパスレッドに着替えた佐藤寿人と風間八宏新監督が並び、J2の戦いに動き出す。J3にはアスルクラロ沼津が加わり、ゴンこと中山雅史がJの舞台に戻ってきた。

 最も大切にしたい、サポーターが望むピッチ上の『競争』はJ1第1節、2月25日から始まる。

佐藤 功(さとう・いさお)

岡山県出身。大学卒業後、英国に1年留学。帰国後、古着屋勤務、専門学校を経てライター兼編集に転身。各種異なる業界の媒体を経てサッカー界に辿り着き、現在に至る。