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動く福岡魂・中倉一志

2015 10/16  20:52

通算12度目の「1-0」。アビスパ福岡はどういうサッカーをするかではなく、「どう勝つか」だけを希求する

いよいよ終盤戦に突入した明治安田生命J2リーグ。自動昇格圏の2位以内を目指す戦いは激しさを増しているが、その中で異彩を放つチームがある。井原正巳監督を迎えて1年目のシーズンにあるアビスパ福岡だ。10月10日に行われた第36節ではジェフ千葉を「1-0」のアビスパスコアで砕いて、3位の好位置につけている。そんな福岡を追い続ける中倉一志が、強さの秘密に迫った。


▼貫くは、堅守堅攻
 堅固な守備をベースに苦しい時間帯を凌ぎ、少ないチャンスを確実に決め切る。それは、まさに福岡らしさの象徴のような試合だった。

 立ち上がりの主導権争いを経て、試合の主導権を握ったのは千葉。両WBを高い位置に置き、ピッチの幅を広く使って前へ出る戦い方に押し込まれた。自分たちの狙い通りに福岡をハメる千葉。福岡対策として3バックで臨んだ関塚隆監督(千葉)の決断は功を奏したかに見えた。

 だが、先制点を奪ったのは福岡だった。

「自分たちの時間帯じゃなくても焦らずに、悪い時間帯もあるんだという割り切った考えで自分たちは戦っている。そこを乗り切れば、絶対に自分たちの時間帯が来ると全員が信じてやれている」(末吉隼也)

 その言葉通り、福岡のゴールは、千葉の攻撃がひと段落した24分に生まれる。左サイド、ハーフウェイライン近くから末吉が送ったロングボールが、ゴール前ファーサイドにポジションを取るウェリントンに届く。頭で落としたボールに飛び込んだのは鈴木惇。そして右足を振り抜いた。

「ウェリントンの力を使いながら、押されながらでもチャンスを作れるというのは、みんなが分かっている。あの場面でも、クロスが上がった時に、自分も含めて、ウェリが勝てると信頼して走っている選手がいた。それが得点につながった理由」(鈴木惇)

 得点に至るまでの戦い方も、得点の形も、福岡らしさを象徴するものだった。

 そして、堅守で試合を締めくくる。75分、金森健志に代えてイ グァンソンを投入。システムを4バックから3バックに変える。フラットな5枚の最終ラインと、その前に4枚のフラットなラインを作る形は、開幕前から福岡が取り組んできたもの。試合を重ねながら、その精度を高めて来た守備は簡単には崩れない。そして、3分間のアディショナルタイムを経て試合終了のホイッスル。福岡は今シーズン12度目となる1-0のスコアで勝利を手にした。

▼まずは結果を出す
「どういうサッカーをするのか」ではなく、「どうやって勝つのか」。

 それが今シーズンのアビスパの戦い方を語る言葉としてふさわしい。対戦相手を緻密に分析し、勝つための戦略を立て、それを全員で実践する。「まずは結果を出すことで、自分たちの課題にも前向きに取り組める」とは、井原正巳監督が常に口にする言葉だが、徹底して結果にこだわり続けることでチーム力を上げて来た。

 それでいて「結果が良ければすべてよし」と考える者は、誰ひとりとしていない。例えば、18勝中、15試合を1点差で制している福岡は、粘り強さと勝負強さが専売特許のようになっているが、その点について、堤俊輔は次のように話している。

「1-0で勝ち切れているのは、全員が集中して、必死に戦っている結果なので、そこは自信を持っていいところだとは思う。けれど、守り切るという感じてやっているわけではなく、90分間、必死に戦った結果が1-0というスコアになっているだけ。逆の見方をすれば、2点目が奪えないとも言えるわけで、2点目、3点目を取りに行くというチーム作りをしていかないと、この先はもっと厳しくなる」

 結果にこだわらず、常に自分たちと客観的に向きあい、さらなる成長に向けてトレーニングに励む。それこそが福岡を支えているベース。中村北斗は「誰も満足はしていない。もっと、もっと良くなれるはず」と話す。

▼地味に地道に、着々と
 そして、とにかくコツコツと積み上げて来た。ひとつ、ひとつの変化は小さなもので、ややもすれば見逃しかねないものばかりだった。

 しかし、開幕から3連敗を喫した時でさえ、常に自分たちのやるべきことを確認し、それを継続し続けたチームは、振り返れば、常にプレーオフ進出圏内を維持してきた。やがて、チーム内の共通意識は強固なものになっていった。それがチームの力として顕著に表れるようになったのが、天皇杯による中断を挟んで再開した第31節以降の戦い。正直に言えば、それまでは結果オーライの試合もあったが、31節以降の戦いぶりには「勝者のメンタリティー」が強く感じられるようになっている。

 だがそれは、あくまでも、ここまでの結果でしかない。

 2位磐田を勝点2差で追うという状況は、福岡に自動昇格の可能性が残ることを意味してはいるが、だからと言って、今の成績が将来の何かを保障しているわけではなく、明日の勝利を約束してくれるものでもない。まして福岡は3位の立場。千葉戦の勝利で磐田との勝点差を2に縮めたとは言え、自動昇格をモノにするためには、残り6試合を勝ち続けなければいけないという状況は何も変わってはいない。そして、後ろにC大阪が勝点2差でピタリと付ける。「簡単に自動昇格の権利を得られるとは考えていない。まだ6試合。何がうるか分からない」と井原監督は気を引き締める。

▼実を結んだアパマンの施策
 さて最後に、アパマンショップホールディングスグループの経営参画についても触れておきたい。一昨年に発覚した経営危機をきっかけに、今シーズンから本格的に経営参画したアパマンショップホールディングスグループは、徹底して社内体制の見直しを行い、様々な施策を打ち続けてきた。

 その結果として、125社だったスポンサーの数は800社を超えるまでになり、観客動員数も着実に増え、福岡のメディア、県民・市民の関心も高まりをみせている。そうした背景を受けてチームが結果を出すことで、さらに周囲のサポートが広がるという好循環を呼んでいる。

 特別にスーパーな選手がいるわけではなく、他を圧倒する戦力も持たない福岡だが、監督、現場スタッフ、選手の力はもちろん、福岡に関わる全ての人たちも含め、あらゆる力を結集してきたことで、今の状況を生み出してきた。それこそが福岡の原動力。そして、残り6試合となったいま、最後まで同じ姿勢が貫けるかと言うことが試されることになる。

 思うように行かない試合は必ずある。予期せぬ結果を招くことだってある。しかし、それもサッカー。それでも、変わらぬ姿勢を貫いた時、J1に続く扉は必ず開かれることになるだろう。

中倉一志

1957年2月生まれ。福岡県出身。小学校の時に偶然付けたTVで伝説の番組「ダイヤモンドサッカー」と出会い、サッカーの虜になる。大学卒業後は、いまやJリーグの冠スポンサーとなった某生命保険会社の総合職として勤務。しかし、Jリーグの開幕と同時にサッカーへの想いが再燃してライターに転身。地元のアビスパ福岡を、これでもかとばかりに追いかける。WEBマガジン「footballfukuoka」で、連日アビスパ情報を発信中。

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