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大宮の明朗系・片村光博

2015 10/09  20:08

秘訣はポジショニング。大宮独走の裏には、確たる理屈に基づく変革がある

J2リーグも残すところは7試合。首位を独走するのは1年でのJ1返り咲きを期す大宮アルディージャである。2位・ジュビロ磐田との勝ち点差は『10』を保っており、安全圏まであと少しという状態だ。なにゆえにこれほどまでに安定した強さを見せられているのか。大宮の何が変わって、どこを徹底しているのか。今季の大宮を丹念に取材してきた、片村光博が迫った。

▼強さの裏付けとなる理屈
"ロジック"と"変化"。J2首位を独走する大宮アルディージャの強さの根源は、2つの要素の融合にある。

 今季の大宮を論じるとき、選手個々のクオリティーに首位独走の理由を求めるのは間違いではない。家長昭博、ムルジャといった既存戦力に加えて、加藤順大、塩田仁史、河本裕之など、J1の主力級と比べても遜色のない実力を持った選手たちが加わった陣容はリーグ屈指だ。

 それでも、選手をそろえただけで安定して勝てるほど、J2は甘いリーグではない。個々の能力を生かすためのベースとなる"ロジック"があるからこそ、独走状態を築くに至っている。攻守両面において大宮を支えているのは、渋谷洋樹監督の言葉を借りると「立ち位置」、つまりポジショニングだ。

 マイボールになればボールホルダー以外が素早く的確にサポートポジションを取り、相手の守備よりも先手を取ってボールを運ぶ。攻撃時の適切なサポートポジションは守備時も効果的に働くように設計されているため、ボールを奪われても即座に奪い返して相手陣内でのプレー時間を継続させる。基本的にはこの繰り返しでピッチを制圧し、相手に生まれたスキを突いていくことが、チームの志向するスタイルになる。

 渋谷監督は第35節で迎えた大一番・ジュビロ磐田戦を前に、あらためて基本戦術について説いていた。

「相手どうこうよりも、自分たちが立ったときにどう付いてくるかというところは大きなポイント。誰がフリーになって誰から攻めたほうがいいかを見極めるというのが、我々がやってきたやり方。ポジショニングがおろそかになると攻撃もできないし、奪われたあとの守備もできない」

 磐田戦の大宮は立ち上がりに不安定さを見せたものの、落ち着きを取り戻すとともに本来の姿を取り戻していく。サイドに幅を取って相手の陣形を広げ、常に複数の選手がサポートに入りながらボールを動かす攻撃と、奪われた瞬間の整備されたプレッシングでピッチを支配。時間とともに圧力を増していった。

▼勝利のための家長&ムルジャ
 ただ、押し込み、ポゼッション率を高めるだけでは得点は生まれない。試合を動かすためには"変化"が不可欠であり、大宮ではトレーニングから相手の背後を突くランニングが強く求められている。磐田戦では対策として落とし込んでいたセンターバックとサイドバックの間へのフリーランを2列目、3列目の選手までもが精力的に繰り返していた。

 最終的にスコアを動かしたのは、家長とムルジャの2枚看板。技術はもちろんのこと、彼らは何よりランニングの質・量が図抜けている。

 磐田戦の70分に生まれた家長の得点は、シュート直前の超絶技巧が話題を呼んだ。しかし押し込んだ状態で狭まったスペースに走り込む感性、そして「僕は出したら常にスペースに走る。シンプルだけど、それだけ心がけている」という献身性がなければ、あの得点は生まれ得なかった。

 家長の質が"柔"ならば、圧倒的なスピードを誇るムルジャは"剛"といったところ。81分にムルジャが沈めた2点目は、カウンターから広大なスペースを利用し、一気呵成のランニングでマーカーの藤田義明を振り切って決めている。試合終盤でもパワーを出し切る姿は、相手エース・ジェイとは対照的に映った。

 狭いスペースを一瞬の判断で攻略できる家長と、ゴールへの距離が長くなるほど破壊力を増すムルジャ。ポジショニングという"ロジック"によって優位性を確保し、突出した個性がもたらす極上の"変化"で決着を付けることで、今季の大宮はコンスタントに結果を残せるチームへと成長してきた。磐田戦は大宮の歩みを象徴する内容だったと言える。

▼「J1対策」を意識しながらのラスト7へ
 一方、先述した試合序盤の不安定さからは、大宮が克服すべき課題もハッキリと見えた。

 経験豊富な守護神・塩田は試合中、守備陣に向かってジェスチャーを交えながら「落ち着け」と繰り返し指示を出していた。あらためて試合を見返した後、塩田は冷静に状況を振り返っている。

「そんなにバタバタするような内容ではなかった。ただ、違うのはクオリティーの高いFWが2人(ジェイ、アダイウトン)いたというところ」

 磐田が繰り出してきたのは、徹底的な"裏狙い"。単純な戦法ながら、ジェイとアダイウトンという強烈な個の力によって連続的にピンチを迎え、2点を先行されてしまった。振り返ると、第32節・セレッソ大阪戦でも、相手の左サイドバック・丸橋祐介へのプレッシャーが緩くなったところから正確なクロスを許し、先制点を献上している。いずれの試合も時間経過とともに対応していったが、J1級のクオリティーを持つ選手たちと対峙したときに対応が遅れてしまう現状は、修正が急務だ。

「クオリティーのあるチームとの対戦だとそういう一瞬のスキが得点、失点につながる。J2だとあそこでミスしてくれたり、個で奪い返せたりするけど、ああいうチーム相手になってくると、力強く入ってこられて、(得点まで)行かれてしまう」(塩田)

 大宮の目下の目標がJ1昇格・J2優勝であることは事実だが、一つひとつの試合でスキをなくしていくことは残り試合での勝利にも、J1を見据えた戦いにもつながる。残り7試合となったJ2リーグ戦に向けての渋谷監督の言葉はシンプルだ。

「高みを目指すためにはスキなく試合をやることに尽きる」

 確固たるベースは出来上がり、個の力を最大限に引き出すこともできている。残るはJ1クラスの相手以外には露呈しなかったスキを排除していくこと。磐田戦を契機に再認識した課題を胸に刻み、大宮は"ラスト7"に挑む。

片村 光博(かたむら・みつひろ)

1989年1月26日生まれ。東京出身、東京育ち(途中、豪州キャンベラで5年半)。2002年の日韓ワールドカップを機にサッカーにのめり込み、約10年後の2012年、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』のインターンとしてサッカー業界に身を投じる。編集手伝いから始まり、2013年には栃木SC担当で記者として本格的にスタート。2014年は大宮アルディージャとジェフユナイテッド千葉の担当を兼任し、2015年からは大宮に専念している。効率的で規律のあるサッカーが大好物。現在は「Omiya VIsion」を随時更新中。

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投票

納得(1票)

匿名(IP:180.42.51.5)

熊本戦はいかがでしたか?
思い切りJ2級の選手にやられたわけですけど

2015年10月10日 16:10

異論(1票)

匿名(IP:210.130.221.111)

スピードの劣化著しいCB
層の薄い(そもそも本職と言えるかどうかもわからん)SB
家長抜きでは形にならない攻撃陣

エレベーターがJ2に戻ってきたとき
何が残ってるのか見ものとしかいいようがない

2015年10月 9日 20:56

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