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VARのJ1リーグ戦への導入に向けて「踏むべき導入ステップを組み直したいというFIFAの意向に基づいて我々は進めています(村井チェアマン)」

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VARのJ1リーグ戦への導入に向けて「踏むべき導入ステップを組み直したいというFIFAの意向に基づいて我々は進めています(村井チェアマン)」~2019年第5回のJリーグの理事会より(5)~『Jウォッチャー ~日本サッカー深読みマガジン~』

5月23日、JFAハウスにて2019年5回目のJリーグの理事会が行われ、理事会後に記者会見が行われた。

今回も、前回に引き続き、記者会見での質疑応答部分をお届けしています。

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(4)はこちら

Q:確認させてください。これから6月にコパ・アメリカが開催され日本代表が出場するなかで、Jリーグの選手が代表に取られる中でJリーグは予定通り行われます。それに対して今日の理事会で今後どうすべきかという議論や意見が出ていたら教えてください。

「JFAから(強化委員長の)関塚隆さんが同席されました。関塚さんはJ1、J2、J3の各実行委員会にいらっしゃって、今回の代表招集への協力感謝などをおっしゃっていましたが、今回の理事会でも冒頭、関塚さんからは、『コパ・アメリカに限らず、ユースの大会(U-20,ドゥーロンなど)も含めて同時に開催される中で、代表派遣の感謝の気持ちと協力要請のお話がありました。私からは『代表とJリーグは両輪となりますので、よく話し合いながら協力しましょう』というお話をさせていただきました。

インターナショナルマッチカレンダー以外の大会については、招集の強制力はありません。ある意味で代表とクラブ間の話し合いになります。個別の話し合いをクラブと行っていただくという枠組みとなります。今日のような協力をよろしくお願いしますという会話があったと認識しています」

Q:理事会からは何か意見が出たりしたのでしょうか。
「いや、特にないです」

Q:浦和vs湘南戦について。審判のレベルを上げる・判定ミスを防ぐという話は置いておいて、あの試合のハーフタイムに、湘南側はボイコットに至りかねないようなやり取りがあったと聞いていますし、試合中断中も浦和の選手・ベンチも含めたやりとりも含めて、フェアプレーとかスポーツマンシップに関わる視点で今日お話しが何か出たかということと、その視点から村井チェアマンが感じられたこと、このようなJリーグになってほしいと思われていることがもしあったら教えてください。

「まず、ご質問されたフェアプレーの精神についてどうあるべきかなどは、今日理事会の場で議論があったわけではありませんが、あの一件以来、我々の内部でも意見交換の場で会話はしています。本当に正解がある議論ではなく、非常に深いテーマだだと思っています。

私としてはまず前提として、私もあの場にいてサッカー専用スタジアムがどんどん増えてきて、サッカーがリアルに視聴しやすい環境が整っていき、私も試合中スマートフォンで動画再生をしました。スタジアムにいる誰もがよりリアルに認識をする環境にどんどん変わってきました。知らないのはレフェリーのみといってもいいくらい、そういう状況に今あることを、従来とはずいぶん環境が異なるという前提に置かなくてはいけないと思います。その時に、判定は横に置いておいてということですが、クラブが明らかにゴールをしたという多くの浦和の選手が認識したと思います。
『ここはゴールが入っているのだから、自分たちでゴールを申請して、ゴールを入れた時点で再開しよう』というスピリッツ、そういった考え方を持つクラブも海外ではあったと認識しています。昔(イングランドの)リーズがそういうようなリスタートの時に動かない、点を入れさせるところから始めたということがありました。

そういう考えをするクラブもありますし、本当にプロが勝負に徹する、心を鬼にしても勝負に徹していくという考え方をもって、ルールを守って戦うことがフェアな戦いなんだ、すべて審判の判定が最終だと言っている中では、審判の判定を違えてまでではなく、審判の判定に従って全力を尽くすのが本当のフェアプレーだと考えるクラブもあるかもしれません。それは一つのクラブのフィロソフィーというか、クラブの信念に基づくものなので、どちらが正しかった悪かったと、早急に結論付けることはできないと思いました。

私は、あの短時間で一体何が起こったのか、選手が一番戸惑ったと思うんですよね。『入った』と思ったと思うのですが、すぐにリスタートしなくてはいけないと思ったのかもしれず、あの行為自体を非難するのも難しいとも思いました。もし時間があるとしたら、ハーフタイムに両チームがどのような議論をされたのか私は知る立場にないので何とも申し上げられないのですが、日本としてそういう部分も含めて、レファリーはその場を読みながらちゃんとその場を解決していくことを、もしかしたら担っているのかもしれないなと。判定は判定でも、あまりにいろいろな状況がある中で、ここはもう少し関係者と協議して、(時間的に少し)ブレイクしてでもあるべき姿を議論していく必要があるのかもしれないです」

Q:ちょっと揚げ足を取るようなことになってしまうと申し訳ないですが。私の勉強不足でしたら申し訳ありませんが、VARを導入するスケジュール感やタイムラインについて言及されたのは先ほどが初めてだったと思います。今回の議論を呼んでいる背景の一つとして、他のリーグが導入しているVARをJリーグが導入できない理由が、現実的な障害があることをあまり理解されていないということがあると思います。先ほどの話だと最速で2021年にJ1とのことでしたが、議論のスピードを上げていったとしても、現実には2020年からは導入できないという現実的な日程感を共有されてもよいのではないでしょうか。

「その通りで、J1全試合ができるとしたら2021年からです。今FIFAが定めるトレーニングをルヴァンカップのプライムステージで消化しても間に合わないので、2年かけて養成コースを終わらせるというのが今タイムラインになります。ステータスとしては養成トレーニングの時期については、ルヴァンカップのプライムステージも踏まえて次に向けた検証をした上で、2020年の詳細まで確定しているわけではありません。ただ今までの会見で、最速で2021年という現時点でのタイムラインについてはお話しできていなかったと思います。
では本当に策はないのか。いわゆるJリーグの公式戦の場で実施しようと思ったら、もう少し時間がかかってしまいますが、もう少し急ぐ余地がないのか。我々にはJ2やJ3もあるので、そういうところで養成トレーニングをすれば早まるかもしれないので、もう少し詳細をこの後詰めていく必要があると認識しています」

Q:2021年より前にJ1でできる可能性はあるのでしょうか?

「現在準備している段階では、審判委員会等との協議では2021年からJ1全試合でできるような準備をしようという会話になっていると聞いています」

Q:(VAR導入の時期についての)言及はこういった場でも頑なに避けられていたので、一般の方には知られていないのではないでしょうか。たぶんそれでファンの方にVARはなぜ入れられないのかというフラストレーションをためる要因になっているのではないでしょうか。

「VARを巡っては、FIFAの厳格な運用を待たずに導入して逆に相当混乱をきたしているというケースが多々あると聞いています。他のリーグを言及する立場にはないですが、先日たまたまトルコリーグで試合を何試合見たのですが、VAR判定をするたびに試合が止まってアディショナルタイムが9分とか7分もあるという状況を何試合も見てきたので、早く入れれば解決できるわけではないです。ちゃんと運用を見極めて、踏むべき導入ステップを組み直したいというFIFAの意向に基づいて我々は進めていますので、むしろVARというものはいったいどういう功罪があり、なぜこのような手順を踏まなければいけないという認識をしているかというコミュニケーションを、もっと審判委員会もしくはJリーグで伝えていくべきだと今のご質問を聞いていて思いました」

レアル戦のVAR運用に混乱。判定行うモニター室が”無人”!? 真相は…(2019年3月11日/フットボールチャンネル)
Jリーグよりも先を行く!?韓国のKリーグで 2017年から導入されたVARの現状と課題とは(yahoo/2019年5月28日)

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