新潟からの帰り道、サッカーの敵は姿を現した(えのきどいちろう)

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新潟からの帰り道、サッカーの敵は姿を現した(えのきどいちろう)J論プレミアム

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

新潟からの帰り道、サッカーの敵は姿を現した(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]十段目

サイモン・クーパーに『サッカーの敵』(白水社)という名著がある。丹念な取材でフットボールに社会学的なアプローチを試みた、僕の大好きな一冊だ。サイモン・クーパーが自らのフットボール愛を隠さないところがいい。政治にからめ取られ、宗教にからめ取られ、スポーツとしての純度を損なうことの皮肉さを語りながら、尚も全編から愛情がにじみ出ている。

で、実は今月、僕も「サッカーの敵」を意識せざるを得ない体験をした。というか、つかの間、自分たち自身が「サッカーの敵」であったのかも知れない。悪魔に魂を取られる寸前でハッと我に返ったとも言える、戦慄の体験だった。まぁ、思わせぶりな言い方をしてもアレだから、シンプルにアウトラインだけ言うと「新潟サポのクルマでビッグスワンに観戦に行き、逆転負けを食らって帰った」話である。その帰路の車中、魔がさしたのだろう、「サッカーの敵」がふっと姿を現した。僕らのクルマに「サッカーの敵」が同乗してきた。

それはJ2第14節愛媛戦だった。本連載の特性上、ここは色んなサポの交差点だと思う。アルビレックス新潟の状況について詳しい方も詳しくない方もおられよう。くどくど説明するつもりはない。あまりうまく行っていないのだ。ここ数年、監督交代を繰り返している。クラブ運営会社の社長交代も繰り返している。J1からJ2にカテゴリーを落とした。かつて「新潟の奇跡」と評判になった大サポーターはその数を減らしつつある。過渡期なのだろう。ひとつの時代が終わり、次の時代の光を探している。

14節愛媛戦は無残な負け試合だった。前半2点リードしながら、後半3失点して逆転負けだ。スタジアムはブーイングに包まれた。4月、成績不振を理由に片渕浩一郎監督を解任し、吉永一明・新監督を据えたというのにチームは連敗、成績はいっこうに上向かない。

僕はサポ2人と軽自動車に乗っていた。埼玉在住の温厚なサポ、(仮に「メガネさん」としよう)メガネさんの愛車だ。関東在住のサポどうし誘い合わせて、軽でビッグスワンへ行くと聞いて、いっぺん席が空いてるとき乗っけてくれないかと頼んでいた。車内は確かに狭いけど、僕には十分だった。むしろ気に入った。これは「世界一小さなサポバス」ではないかと思ったりした。往路は希望があった。勝ちたい。ここ何年続いてきたことが今日という日を境に好転するんじゃないか。

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