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【浦和】「17年間での最高の瞬間はACL城南一和戦のPK戦勝利」平川忠亮、引退記者会見 前編

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無料記事:「17年間での最高の瞬間はACL城南一和戦のPK戦勝利」平川忠亮、引退記者会見 前編浦レポ by 浦和フットボール通信


(Report by 河合貴子)

引退を意識したのは2年前から

穏やかな小春日和の中で練習を終えた平川忠亮選手は、本当に穏やかな表情を浮かべて記者会見場に姿をみせた。

テーブルにはACL優勝した時のボールが置かれ平川選手が、ACL優勝2回、Jリーグ優勝、Jリーグカップ優勝2回、天皇杯優勝2回と本当に数多くのタイトルを手にしてきたことを物語っていた。

平川選手は「(引退を)意識し始めたのは、2年前ぐらいから。やっぱり、試合に出る機会が減ってくる中で、自分の中でもどうしてもパフォーマンスが落ちてきていることは実感していた。

その中で、徐々に自分の中で熱く湧いてくるものが、これからの選手としての自分にではなく、次を考え出している自分がいた。自分がどれだけ貢献できるかの部分は、もちろんこだわってやってきたし、自分が出られる試合の準備は常にしてきた。2年前くらいから少しずつ考え出して、今年決断に至った」と落ち着いた口調で引退を決意した経緯を話したのだ。

そして「選手をやっている以上はどこかで誰もが終わりますし、自分も最年長でやっていて、自然の流れだと思う」と冷静に受け止めていたが、ご家族の話になると「一番ビックリしたのは、自分の息子ですかね。奥さんには先に伝えていましたが、子供にどのタイミングで伝えようかと考えていた。今、小学3年生の男の子と、2年生の女の子がいますが、自分の中で子供の記憶に残るくらいまで選手でいられたら良いなと思っていたが、伝えるにあたって、お兄ちゃんの方が泣いていました。

勉強していたんですけど、顔を見せずに肩を震わせていて、その光景を見た時は、ちゃんと覚えているまでやることがどうだったのかなとも感じた。記憶が残らない時期に辞めていれば「昔、選手だったよ」というくらいでうまくいったのかも知れません。

ただ、自分がやってきたことを直接伝えることができて、息子もそれだけショックを受けましたけど『これからはお前が頑張るんだよ』ということは伝えた。一つの目標も叶いましたし、息子だけではなくて、子どもたちの世代の選手がいつかレッズでプレーしてくれるようになってくれればうれしいし、そういった選手に育ってくれたらいいなということは伝えました」と話し、少し目頭を熱くしたように見えた。

17年間での最高の瞬間

現役17年間を振り返りながら「本当に数多くのタイトルを獲ることができて、そのメンバーの一員としてやってこられて非常に幸せでした。

その瞬間は、どのタイトルも最高にうれしかったですけど、やはり一番覚えているのは、2007年ACLのPK戦(準決勝・城南一和戦)で5人目を務めたこと。本当に苦しい試合で、なんとかPKで勝利するのが精一杯だったかなという思いもありますし、城南がすばらしいチームで、苦戦したことは今でも覚えている」とACL決勝進出を決めた城南一和戦を鮮明に思い出した。

そして、PK戦にもつれ込んだのシーンを思い出しながら「その中で、全員が力を出し切った中で、自分がPKの5人目で、都築さんが1本止めてくれていたので、外してもサドンデスで終わらないって、緊張感もプレッシャーもない中で蹴ることができた。あの瞬間は、自分でもあまり覚えていないくらいうれしかったし、感情が爆発した瞬間だった。

本当に疲れていて、監督の話もあまり聞いていなかった。マッサージや水分補給などリカバリーする方に集中していた。『平川も蹴るぞ』と言われて『俺、蹴るんだ』って思ってセンターラインに並んだ時に、そういえば『俺、何番?』ってみんなに聞いたら『分からない』となって、でも1番から順番に出て行って、5番しか空いていなくて、多分5番なんだなということで蹴りに行かせてもらった」と苦笑いしながら話した。

120分の死闘を繰り広げ、決勝戦進出をかけたPK戦。浦和のゴール裏には、大旗が集合しポンテ選手、ワシントン選手、阿部選手、永井選手としっかりとPKを落ち着いて決めた。一方の城南は、2番手のチェ・ソング選手のPKを都築選手が真正面で止めていたのだ。先攻の浦和の5番手、平川選手が決めれば、浦和の決勝進出が決まる。浦和のアジア制覇の夢を平川選手が、ゴール右隅へと叩き込んだ。

プロになって、公式戦で初めて蹴ったPKであった。やはり、平川選手にとってはこの試合が、一番印象に残っていたのだ。

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