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「絶対に見返してやろう」とGK横山卓司は誓った「ラインメール青森FC通信」ゴールキーパー争いに注目、横山卓司対伊藤拓真

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「絶対に見返してやろう」とGK横山卓司は誓った「ラインメール青森FC通信」ゴールキーパー争いに注目、横山卓司対伊藤拓真川本梅花 フットボールタクティクス

「ラインメール青森FC通信」ゴールキーパー争いに注目、横山卓司対伊藤拓真

昨シーズンの9月23日、JFLセカンドステージ第9節、FC大阪戦の敗戦(2-4)によって、当時監督だった葛野昌宏は、正ゴールキーパーの伊藤拓真から横山卓司への交代を決断した。

10月8日の第10節の栃木ウーヴァFC戦から、11月12日の最終節のヴェルスパ大分戦までの6試合に先発したGKは伊藤ではなく横山だった。なぜ、横山が試合に使われるようになったのだろうか。

それは、ラインメール青森の戦い方に関係している。最終ラインを高くして攻撃に人数をかけて戦うやり方をとった青森は、必然的にディフェンス陣とGKの距離が開く。その距離を埋めるのが、GKの役割となる。つまり守備範囲が広いGKが必要になってくる。

伊藤は、安定したプレースタイルで、ゴールマウスをしっかりと守るタイプの選手である。一方の横山は、前への飛び出しを得意とするプレーヤーだ。チーム戦術が引いて守る戦い方の時は、安定した伊藤が適任者だった。しかし、ラインを高くして戦う場合、守備範囲が広い横山がフィットする。しかし、監督がGKをチェンジすると決断することは容易くはない。GKはチームの要であるので、「この対戦相手にはこのGKで」とはいかないのだ。

横山の場合、リーグ開幕前は、先発メンバーで試合に使われていた。けれども、公式戦が始まったなら、伊藤が試合に使われるようになった。セカンドステージになってもなかなか試合に出場できずにいた。

そんな横山に、チャンスが訪れる。FC大阪戦での完敗によって、監督は決断を迫られることになる。JFL昇格の1年目の後半数試合で勝てなくなった悪循環が、2年目にも繰り返されるのか。ここで流れを断ち切らないとならない。失点を防ぐために、監督は、GKの交代を決断したのだった。

このインタビューは、ずっと試合で使われなかった1人のGKの告白である。諦めずにトレーニングに励んだGKの言葉の響。諦めなかった彼が見た景色はどんなものだったのだろうか。

ーーラインメール青森に移籍してきたのは、どういう経緯からなんですか?

横山 青森に来る前は、グルージャ盛岡にいたんです。怪我をして半年くらい練習ができなくて、なんとか復帰したんですが、その後で、首になりました。そうしたタイミングの中で、青森から話をもらって、こちらに拾ってもらった形ですね。

ーー青森の話は、誰からあったんですか?

横山 グルージャのGKコーチが、クズさん(葛野昌宏前監督)と一緒にいたことがあって、その関係から話がありました。

ーー青森のチームの印象はどうでした?

横山 すごいプロ意識が高い選手たちがいてびっくりしました。バッさん(河端和哉)とか、上の年代の人たちはプロ意識を持って練習や練習試合に取り組む。練習にかける気持ちとか、サッカーにかける気持ちが、すごいと感じましたね。

ーーシーズン当初から試合になかなか出られない。GKは使われると使われ続けるし、一試合ごとに交代するようなポジションではない。よく腐らずに、気持ちを切らさずに、戦い続けましたね。

横山 若い時は、大変でした。気持ちを維持することが難しかった。試合に出られなくて、腐りかかった時期もあったんです。その話は若い時ですよ。今はそんなことはないです。今は、練習の時にも、チームのために自分は何ができるのか、を考えてプレーしています。それから、チームの選手が自分に声をかけてくれたので。それが自分のモチベーションの維持につながりましたね。

ーーFC大阪戦で伊藤くんが失点を重ねた。次の試合から、スタメンで使われるようになりました。監督には、何か言われたんですか?

横山 チームが国体に行く前に、「来週の試合(栃木戦)から使うから」と言われたんです。

ーーその時は、どんな気持ちになったんですか?

横山 「やっときたな」という想い。自分が貯めていた想いがあったんです。悔しさがすごくあった。それを「絶対に試合にぶつけよう」と。こんなことを言ったらなんなんですが、「絶対に見返してやろう」と思っていました。

ーーなんに対して「見返してやろう」なんですか?

横山 いろんな見方ってあると思うんです。「このGKの出足がいい」「このGKはフィードがいい」。GKへの見方は色々ある。実は、シーズンが始まる前にいきなり変えられたんです。その時、説明もなにもなかった。「なぜなんだ」「なんなんだろう」と思いました。「信頼されていない」と感じていました。それは練習とか練習試合でも、実感していたんです。「ああ、使いたそうだな」と思えた時もあったんですが、結局は使われずにきました。そうした時に、ふと、思ったんです。「監督よりも、やっている選手から信頼を得たいな」と。そう考えてトレーニングをしていたら、フィールドの選手から声をかけてもらった。「わかってくれる人がいたんだ」と思って、そういう人たちのためにも、「ここは諦めないでやってやろう」と踏ん張ったんです。自分のプレーを信頼していない人もいる。でも、そうじゃない人もいた。じゃあ、信頼してくれた人のためにも、「自分はこんなものじゃないんだ」「見返してやろう」と。「絶対にやってやろう」と。そう思って、やりましたね。

ーー結果が事実を証明していますよね。後半になって、チームが崩れないで戦ってきた。

横山 自分の良さを出そうと考えてゴールを守っています。他のGKは僕とはタイプが違うので、いかに自然体になって試合に入っていけるのか。そして、試合を運んでいけるのか。僕のストロングポイントを出していきたい。何人かの選手に声をかけてもらって、それが自分の支えになった。諦めなかったのは、周りの選手のおかげですね。とにかく試合をゼロで抑えてチームを勝利に導くプレーをしたい。そうしたことの積み重ねでしか、信頼を得られないですから。

望月達也新監督は、正GKに横山を選択するのか、それとも伊藤を起用するのか。

2018年のシーズンのGK争いに目が離せない。

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