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【水戸】プリンスリーグ関東・参入決定戦 対日本航空高校「一発勝負の難しさ。試合の入りにリズムをつかめず2失点。プリンス参入逃す」

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【育成NOW】プリンスリーグ関東・参入決定戦 対日本航空高校「一発勝負の難しさ。試合の入りにリズムをつかめず2失点。プリンス参入逃す」(2017/12/25)※無料記事デイリーホーリーホック

【写真 佐藤拓也】

一発勝負の「経験の差」

今シーズンIFA1部リーグ(茨城県リーグ)で優勝した水戸ユースは茨城県代表として12月23日、埼玉スタジアム第3グラウンドにおいて、水戸ユースはプリンスリーグ関東・参入決定戦の第1戦に挑みました。対戦相手は山梨県代表の日本航空高校。初戦を勝ち上がり、2回戦で昌平高校(埼玉県)と矢板中央高校(栃木県)の勝者と25日に対戦して勝利すれば、5年ぶりとなる「プリンスリーグ関東」参入が決定します。


運命の一戦に向けて、樹森大介監督が懸念していたのが「メンタル面」でした。選手権予選やインターハイ予選など一発勝負を多く経験している高体連のチームに対し、水戸ユースはリーグ戦を中心に戦ってきたといういこともあり、一発勝負の試合の経験は日本航空の方が上。その中でいかに「いつも通りの力」を発揮できるかが勝負のポイントとなると樹森監督は見ていました。試合前には「こういう試合では当たり前のことができなくなることがある。自分たちのやるべきことをしっかり見つめ直して試合に入ろう」と言葉をかけて、試合に送り込みました。

しかし、試合がはじまると、「経験の差」が出てしまいました。序盤から日本航空はフィジカルの強さを生かしてハイプレスとロングボールを徹底する戦いをしてきました。それに対して、水戸ユースは「相手の勢いに飲まれてしまった」(村山璃空)。水戸ユースらしい細かいパスをつないで攻撃を組み立てる形を出せず、相手に合わせてロングボールを蹴り返してしまう場面が続きました。

20分近く経過すると、水戸ユースは落ち着きを取り戻し、ボールを動かしながらチャンスを作り出すことができるようになりました。しかし、好事魔が多し。水戸がペースを握りだした直後に先制点を与えてしまいました。21分、中央での混戦から強烈なミドルシュートをゴールに叩き込まれてしまったのです。GK木村豪が必死に手を伸ばしたものの、わずかに届きませんでした。

【写真 佐藤拓也】

ここまでの奮闘は水戸の誇り

ただ、水戸の選手たちは下を向くことはありませんでした。すぐに点を取り返そうと、攻勢を強めました。しかし、先制点から5分後、水戸が猛攻を仕掛けてCKを得たものの、CKのこぼれ球を拾われ、電光石火のカウンターから追加点を許してしまいました。

痛恨の2失点目を喫し、戦況はかなり厳しくなりました。後半に入ると、水戸ユースがボールを支配して攻め込む展開が続きましたが、ゴール前で体を張って守る日本航空のゴールをこじ開けられることができないまま試合は終了。「プリンスリーグ」参入を成し遂げることはできませんでした。

それでも5年ぶりにIFAリーグを制し、この場に立てたことに大きな意義があると言えるでしょう。一発勝負の難しさを肌で感じたこの経験を今後に生かして、今回達成できなかった「プリンスリーグ」への扉を開いてもらいたいと思います。

そして、県リーグを制覇して、新たな歴史を作るために奮闘し続けてきた水戸ユースは水戸ホーリーホックの誇りです。これまでの歩みに胸を張って、次なるステージへ向かっていってください。

【写真 佐藤拓也】

コメント
樹森大介監督

Q.自分たちの流れに持って行くまで時間がかかってしまいました。
「入りは決してよくなかったのですが、それも想定内でした。相手が出してくるパワーに対して、いかに対応できるかがポイントになると思っていましたが、飲み込まれてしまいました。我々の抱えてきた課題なのですが、『自分たちからやる』というところをうまく出せなかった。その点に関して、相手の方が強かったと思います」

Q.前半はボールを動かすことを少し恐れていたように感じました。
「ミスをしてボールを奪われたらダメだというリスクへの思いが強くなってしまっていたと思います。個人個人が消極的になってしまったところがありました」

Q.後半はボールを支配して攻め込み続けました。
「相手が2点をリードしてリスクをかけてこなくなったところも影響していたと思います。立ち上がりのところで1点取れていれば、違った展開になったのかなとは思いますね」

Q.一発勝負の難しさを感じました。
「一発勝負に関しては、Jユースカップで3試合経験しているので、いいイメージを持って臨んだつもりでした。ただ、やはり参入戦は独特の雰囲気でしたね。いつもと動きがちょっと違いました」

Q.最後は残念な結果となってしまいましたが、IFAリーグで優勝するなど素晴らしい結果を残したチームでした。あらためて今年のチームはどんなチームでしたか?
「3年生がすごく頑張ってくれて、チームとしてすごく成長した代だったと思っています。3年生は自ら先頭に立つタイプの選手がすくないのですが、不器用ながらもみんなでチームを盛り上げてやってきた。結果につながったと思います。本当によく努力してくれた代でした」

Q.今年のチームの強みは何でしたか?
「守備がしっかりできること。そして、ハードワークができること。さらにセットプレーも強かった。そこからチームとしてボールを持てるようになっていきました。うまくかみ合った時にはすごく力を発揮できるチームでした。それだけに最後の試合で力を出せなかったことは悔しいですね。ただ、まだまだだということだと思います。これからトレーニングしてもっと強くなっていきたいと思います」

Q.この場に立ち続けることが大事だと思います。
「日本航空さんは昨年参入戦に出場して負けている。それだけに戦い方を理解していましたね。ウチは5年ぶりの舞台で、前回経験した選手は1人もいなかった。その点の弱さが出たところも多少あったと思います。ただ、勝てなかったのは実力。そこを受け止めて、次に向かいたいと思います」

Q.次の代に期待することは?
「3年生によってチームのカラーは変わります。次の3年生の性格を理解して、新たなスタイルを作りたいと思います。そして、もう一度この場に戻ってくることが目標。今日、あらためていろんな人に支えられていることを実感しました。保護者やサポーターの方、クラブスタッフやOBなどたくさんの人が応援に駆けつけてくれました。なので、恩返しできるように、しっかりやっていきたいと思います」

〇村山璃空キャプテン(3年)
Q.残念な結果に終わりました。
「今年の課題である出足の部分がうまくいかなかった。試合の入りが悪かったことが結果につながったと思っています」

Q.相手の勢いに飲まれてしまいました。
「自分たちの時間を作りたかったのですが、相手のプレッシャーが早くて練習でやってきたことを発揮することができませんでした」

Q.一発勝負の難しさを感じましたか?
「監督からは『参入戦の雰囲気は今まで体験したことのない異次元なもの』と言われていて、分かってはいたのですが、雰囲気に飲みこまれてしまったところはありました」

Q.この経験を今後に生かしてもらいたいですね。
「2年生に申し訳ない思いでいっぱいです。来年は下の代が上のリーグで戦えるように、なんとしてもプリンスリーグに昇格してもらいたいと思います」

Q.今年の3年生はどんな代でしたか?
「気持ちが弱い代だとずっと言われてきました。自分を持ちすぎている選手が多くて、まとめるのが難しかったですね(苦笑)。でも、最後は一つになって戦えたと思います」

〇岡安優選手(3年)
Q.試合の入りが悔やまれますね。
「相手の勢いに圧倒されて自分たちの流れに持っていけませんでした。後半は自分たちのつなぐスタイルを出すことができましたが、決めるところで決めることができず、悔いが残りました」

Q.いい流れになった時に失点してしまいました。
「自分たちの流れになりかけた時に立て続けに失点してしまい、苦しくなってしまいました。たくさんの人に応援してもらっていただけになんとしても勝ちたかったというのが本音です」

Q.でも、この場で戦えたことは大きな経験ですね。
「自分のサッカー人生においてもかけがえのない経験ができたと思っています。大学でもこの経験を生かして、4年後にプロになって戻ってきたいと思います」

〇大原彰輝選手(3年)
Q.試合の入りでリズムを作ることができませんでした。
「チーム全体で意識を統一して試合にはいったのですが、どこかいつもと違った。雰囲気に飲まれてしまったところがあったと思います。1人1人の動きが堅く、相手陣内にボールを運べなかった。うまくいかないなという雰囲気が出たところで連続失点してしまいました」

Q.うまくいかない時間帯、ピッチ内ではどんな声をかけ合っていましたか?
「『いつも通りやろう』という声は出ていました。自分はまず守備からリズムを作ろうと思って、守備に集中していました」

Q.一発勝負の難しさを感じた?
「こういう雰囲気で試合できた経験を積み重ねていかないといけないと思います。この経験を生かすも殺すも今後の取り組み次第。後輩たちには来年この場でリベンジを果たしてもらいたいと思います。僕はプロとして、そしてみんなは大学でこの経験を生かしていくことが大事だと思います」

Q.大原選手はトップ昇格をします。ここから気持ちを切り替えていかなければなりません。
「正直、悔いは残ります。自分がもっと引っ張ってできていればという思いはあります。もっともっとチームメイトと一緒にサッカーをしたいという思いは強いですね」

Q.後輩にメッセージは?
「今年、1年生も試合に出ている選手がいたし、この経験は大きな財産になると思う。そして、それが自信につながる。僕らはプリンスリーグ昇格という置き土産を残すことはできなかったですが、2年生には僕らができなかったことを達成してもらいたいと思います。そして1年生にはプリンスリーグで戦ってもらいたい。来年、俺らの分まで頑張ってもらいたいと思います」

(佐藤拓也)

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