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【水戸】第42節モンテディオ山形戦「リーグ前半戦で見せた『水戸らしさ』とは異なる、進化した『水戸らしさ』を発揮して、ホーム最終戦を勝利で飾る」【プレビュー】

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水戸ホーリーホック、対山形戦のプレビューになります。


【プレビュー】第42節モンテディオ山形戦「リーグ前半戦で見せた『水戸らしさ』とは異なる、進化した『水戸らしさ』を発揮して、ホーム最終戦を勝利で飾る」(2017/11/11)※無料記事デイリーホーリーホック

【写真 水戸ホーリーホック】

どうやってハイプレスを出していくか

徹底する。言葉にすると簡単だが、実行するのは難しい。なぜなら、サッカーとは相手がいることだからだ。チームが強くなれば強くなるほど、相手は「徹底をさせない」ように対策を練ってくる。それを乗り越えて、いかなる状況でも徹底できているのが湘南であり、長崎であった。今、水戸はそういうチームの仲間入りができるかどうかの岐路に立たされている。


リーグ前半戦で快進撃を見せたチームの戦いは丸裸にされ、徹底して分析されてきた。そして、水戸の強みであるハイプレスと縦への推進力を出させないための対策をどの相手も練ってきた。前節、2位の長崎もそれを徹底してきた。水戸のハイプレスを避けるために徹底してロングボールを蹴り込み、先制してからはリトリートしてカウンターを繰り出すスペースを埋めてきた。そして、水戸のホームでの強さを出させないためにコイントスに勝ってエンドを変えるという細かいところにもこだわってきた。相手に徹底させず、自分たちのやるべきことを徹底する長崎の強さを存分に発揮されたゆえの敗戦となったと言えるだろう。

それを乗り越えるために試行錯誤してきたリーグ後半戦だった。今シーズン掲げた「ハイブリッドの守備」を確立させるために、前半戦のサッカーで立ち止まることなく、次なるステップを踏もうとしてきた。
「我々のよさはハイプレスなんですけど、相手がハイプレスにどうやって対策してきたかということが問題で、その相手に対して、どうやってハイプレスをかけていくかに取り組んできたんです。ガンガン行くだけがハイプレスなのか。逆に行かないことも必要かもしれない。一つパワーを溜めて、相手の状況を見て、相手にバックパスを出させたところからハイプレスをかけるやり方もハイブリッドの守備の中にはある」
西ヶ谷隆之監督が説明するように、相手の出方によって守備の仕方を変えながら、最終的に水戸の強みを出していく。そこにトライし続けてきた。

だが、それが完成したかというと、「まだ過程」だと西ヶ谷監督は言う。それは前節長崎戦を見ての通り。相手のロングボール攻撃に対して、むやみにハイプレスをかけるのではなく、「前の2人が追って蹴らせて、セカンドボールを拾うというイメージ」(林陵平)を持って守備を行い、そこから相手のプレスをかいくぐって、縦への推進力を出したいところだったが、ボールを奪った後のパスでミスを連発して自分たちの流れに持って行けず、防戦一方の展開を強いられた。徹底するためのトライが失敗に終わってしまったのだ。

後半戦は失速ではない。さらなる飛躍への準備期間

ふがいなく敗戦を喫した前節だが、トライしたことは事実である。それは前節だけではない。リーグ後半戦、苦しみながらも選手たちは次のステップに行くためのトライをし続けてきた。うまくいかないことも多かった。それでも前だけを見つめてトライし続けてきた。ホーム最終戦となる今節に向けて、「前半戦のいい時のサッカーを思い出したい?」という質問をした際、強く否定してこう言い切った佐藤祥の言葉が印象的だった。「前半戦のサッカーを思い出しても意味がないと思っています。あの時があったから、もう一段高いサッカーを見せられると思っています。今に集中して戦いたい」
自分たちは立ち止まっているわけではない。前に進んでいるんだ。その気概が言葉にあふれ出ていた。

「徹底」を体現させるために、求められるのはピッチ内の意思統一だ。チームとしての狙いを全員が理解し、ピッチ内で状況を見極めながら選手同士で必要以上にコミュニケーションを取って意志を統一させていく。そして、その判断において、少しの「勇気」というスパイスを加えることでチームは躍動感を取り戻すことができるだろう。中盤の位置を高く保ち、FWとの距離を埋める作業をできる限り行えるかが今節のカギを握る。

ホーム最終戦、見る者が期待するのは攻守でアグレッシブな姿勢を見せる「水戸らしさ」だ。しかし、今節見せようとしている「水戸らしさ」はリーグ前半戦で見せた「水戸らしさ」とは違う。様々な試行錯誤を繰り返しながら手に入れた柔軟性の伴う「水戸らしさ」である。それを体現して手にする勝ち点3には大きな意義がある。苦しんだリーグ後半戦は決して「失速」ではない。さらに高く舞い上がるための準備の期間だった。それを証明するための勝利を、チーム一丸となって奪いに行く。

(佐藤拓也)

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