その男、独身により喫茶店にいつもいる。【ラインメール青森通信】

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【ラインメール青森通信】その男、独身により喫茶店にいつもいる。川本梅花 フットボールタクティクス

その男は、喫茶店のカウンターの席からTVを見ていた。

「いつもこの席に座るんですか?」

私は、その男に尋ねた。

「そうです。いつもカウンターですね」

その男は、「当たり前ですよ。そんなこと聞かないでくださいよ」と自明のように答える。

その男は、ときどき女店主と談笑していた。

「この店には、よく来るんですか」

と、私は質問した。

「はい。練習が終わったら、昼ごはんを食べて、いったん家に戻って、夕方にまた来て、閉店近くまでいます。遠征日以外、ほぼ、毎日ですかね」

その男は、「いまさら聞かないでください。自明なことなのに」と言いたげに私に話す。

「この店には、ラインメール青森の選手が来て、食事をしていくんですね」

その男は、「はい」と答えて「師匠とよく昼食をとりますね」と話した先に師匠がいた。「師匠って、奥山(泰裕)選手なの?」。「そうですよ」。その男は、「もう当然なことを聞かないでくださいよ」と自明な話はしたくないと、そっけなかった。

そして、その男は、振り返って視線をカメラのレンズの方に向ける。

「あの......すみません。ここのオススメ料理はなんですか?」

と私はその男に尋ねる。

「明太子・納豆オムレツとボロネーゼですね」

その男は、躊躇なくオススメの料理を答えた。

それも、自明なことなのだろう。私は心の中でその男のことを「自明先生」と呼ぶことにした。しかし、もちろん本人には、「××先生」と先生を付けた名前で、少しおちゃらけて呼んでいたのである。

その男の名前は、望月湧斗と言う。東京武蔵野シティFC(以下武蔵野シティ)に昨年まで所属していた。今季からラインメール青森FCにやって来たサイドバックが本職のプレーヤーである。

私は望月先生に「なぜ、ラインメールなのか?」を尋ねる。

望月先生は、「サッカーがしたかったんです。サッカーに打ち込む環境でサッカーがしたかった」。そう語った望月先生だった。

「武蔵野シティでは、サッカーに打ち込めなかったの?」

「武蔵野は、社員選手が多いんです(前身は横河電機)。練習に選手全員が参加することが、なかなかできなくて、紅白戦も満足にできない。8対8での紅白戦をやったりしました。それはもう、ミニゲームですよね」

望月先生に「ラインメールに来て満足しているのか?」とうかがった。

「はい、サッカーだけに打ち込める環境です。だから、今という時間を大切に過ごしたいんです」と答える。

師匠と慕う奥山選手とポジションはかぶる。24歳になった望月先生は、師匠である奥山選手から、サッカー選手としてたくさんの事柄を吸収しようとしている。越えなければいけない山はとても高くそびえる。しかし、その山を越えようとして取り組まないと、明日の自分は、ここにいないかもしれない。それだけ、厳しい世界に身を置いている。東京武蔵野シティ時代は、望月先生自身も別の仕事をしてサッカーを続けていた。その時と比べれば、今はサッカーで生活できる環境にある。

「サッカーに集中したい」と考えて青森にやってきた望月先生は、笑顔で今を生きている。

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